Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

栄養豊富な「ナッツ類」の健康への功罪

間食にちょっとつまんだり、お酒のつまみに手軽で重宝される「ナッツ類」ですが、その栄養豊富さから、単なるつまみの域を超える扱いになってきていますので、改めてその情報を提供します。

 

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ナッツ類は種実類に分類日本食品成分表)され、その内の木の実のことを指しています。代表的なナッツ類にはアーモンドをはじめ、クルミやピスタチオ、更に語尾にナッツの名があるカシューナッツ、マカデミアナッツ、ピーナッツ(落花生)等があります(ピーナッツは豆科で豆類なのですが、日本食品成分表でも種実類に記載)。

 

ナッツは良質の脂質に富み、タンパク質、ビタミン、ミネラル及び食物繊維の良い供給源です。しかし、高脂質ということは高カロリー(約600kcal/100g)ですし、アレルギーのリスクもあります。

 

個々のナッツにより栄養価やその効果が異なるので、以下にその具体的な特徴を挙げます。

アーモンド → 若々しさ:ビタミンEが多く抗酸化作用がある。食物繊維の量はナッツ類で最大。

くるみ → 血液さらさら:ω3脂肪酸(α-リノレン酸等)が血液をさらさらにする。メラトニンが多く安眠効果がある。

ピスタチオ → むくみ解消カリウムが高血圧を予防しむくみ解消になる。フラボノイドには抗酸化作用がある。

カシューナッツ → 筋肉隆々:タンパク質に富み筋肉を作る。ビタミンKが骨形成に効果的。

マカデミアナッツ → 天然オイル脂肪酸のパルミトレイン酸は石鹸やローション等に使え、美容効果が高い。

ピーナッツ → 長寿効果:ナッツ類の中では脂質が少なく栄養バランスが良い。薄皮にあるレスベラトロールにはアンチエイジング効果がある。

これらのナッツ類の健康効果を把握した上で、自分に合わせた摂取を心掛けてください。

 

最後に、栄養豊富なナッツ類ですが、高カロリーなので食べ過ぎへの注意が必要です。一日に片手一杯(25g程度)にしましょう。また表示を見て、油で揚げたものや塩分の多いものも避けるべきです。

(なお本文中の下線部については、あさイチ「夏はナッツで美しく!」(NHKTV:2019.8.20)の情報を参考にしました。)

新しいタイプのタンパク食材:大豆ミートとは?

大豆は昔から和食の食材として、日本人の重要なタンパク源(畑の肉)としての位置を占めてきました。そのまま煮豆や総菜として使われる他、豆乳にして豆腐・油揚げ・おから、発酵させて納豆・味噌・醤油など、多彩な加工食品としても重宝されています。

 

さて、大豆ミート(大豆肉、ソイミートとも言う)ですが、今から50年ほど前に、ヴィーガン(完全菜食主義者)のために開発されました。大豆からタンパク質を取りだし、繊維状にしたものです。その後、近年になって加工技術が進み、形状とともに肉のような食感や食べ応えが得られるようになり、一般にも普及してきました。

 

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大豆ミート栄養・健康的な特徴です(数字は湯戻し後100g当たり)。

・高タンパク:タンパク含量は17~20gで、畜肉と比べても遜色なく良質

・低カロリー&低脂肪:カロリーは100~150kcal(畜肉の約1/4)で、脂肪は1g以下

・ノンコレステロール:植物性なのでゼロ、サポニンが体内コレステロールの排出作用も示す

・豊富な食物繊維:畜肉には含まれないが、約5gと豊富

・ミネラルとビタミンも豊富:カルシウムや鉄、ビタミンB1・B2・E・Kが豊富

イソフラボン含有:約50mg含まれ、女性ホルモン様作用や抗酸化作用で健康効果が高い

 

大豆ミートには、ミンチ、ブロック、フィレ(薄切り)の3種類の形状がありますので、料理によって使い分ける必要があります(レシピを参照)。さらにそれぞれにタイプとして、乾燥、レトルト、冷凍の3種類があります。これまでは乾燥タイプが主流で湯戻しの手間がありましたが、近年、使い勝手を向上させた後者2タイプの需要が増えているようです。

 

新たな代用肉としては、家畜の細胞を培養して作る培養肉(人工肉)も注目されていますが、受け入れには躊躇が見られ、一般的な普及はまだ先でしょう。

その点、健康的で栄養価の高い大豆ミートは、手ごろな価格で保存も利きます。先ずは、ハンバーグや酢豚等の具材に使ってみて、積極的に食卓に上げてはどうでしょうか。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

ステイホームの今こそ、「朝食」の重要性を見直そう!

我々は一日に3食(朝食、昼食、夕食)が基本の食生活を送っています。その3食の中で、多くの方は恐らく、夕食のウエイトがかなり高いのではないでしょうか。また時間がないからと、朝食を摂らない、あるいは簡単に済ます方も多いはずです。

しかし、最近の時間栄養学の成果として、3食の割合は「朝・昼・夕をカロリー比で3:3:4にするのが適切」であることが判明しましたし、また朝食の摂取が、生体リズムのズレをリセットする役割も担っています(当該ブログ「体内時計(その1&2)」でも紹介済み)。

そこで、普段は何となく疎かにしがちな朝食の重要性について、ステイホームで時間に余裕のある今こそ、再認識したいと思います。

 

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そもそも朝食(breakfast)は絶食(fast)を断つ(break)と言う意味で、夕食から10時間前後の空腹後の食事です。朝食を摂取することで、エネルギーを補給し、体温を上昇させ、かつ生体リズムを整える事ができますので、1日の中で最も大切な食事と言っても過言ではありません。

 

それでは朝食の中身について、見ていきましょう。

・まずエネルギーの補給という意味では、糖質の摂取です。主食のご飯やパン(デンプン:多糖類)の他に、果物(果糖やブドウ糖)や飲み物に入れる砂糖(二糖類)などが必要です。ただ急激な血糖値の上昇を防ぐためには、野菜から先に食べる(ベジファースト)ことが重要になります。

・次に体温上昇かつ良質の睡眠や筋力保持のためにも、タンパク質の摂取は欠かせません。タンパク質は三大栄養素の中で最も食事誘発熱産生が高いので体温を上げ、構成アミノ酸であるトリプトファンは、セロトニンメラトニンに変換されて睡眠の質を上げることに繫がります。

ビタミンやミネラルの補給や血糖値の急上昇(血糖値スパイク)の予防のためには、野菜の摂取も忘れてはいけません。特に代謝をスムースにするビタミンB群(B1,2,6等)は必須です。

 

要は、「高タンパクな朝食」を意識することがポイントです。朝食でのタンパク摂取量として、20~25g程度が目標になります。食材としては鶏卵や魚、ハム&ソーセージ、チーズ、大豆製品が浮かびますが、和朝食や洋朝食など具体的なレシピは別途に参照(例えば、森永製菓:朝こそタンパク質を摂取する!意外な影響と高タンパクな朝食レシピを紹介!等)願います。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

体に必須の栄養素「タンパク質」の重要性とは?(その3:具体的な摂り方)

本報では、前報でのタンパク質摂取の考え方を踏まえて、具体的な摂り方を紹介します。

 

まずタンパク源を動物性と植物性に分けて、それぞれの特徴を整理しておきます。

 

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A.動物性タンパク質食品(肉、魚、卵、乳・乳製品など)

  ・タンパク質は良質(アミノ酸スコアがほぼ100)で、含有量も高い

 ・肉には飽和脂肪酸が多く、魚にはω3系のDHAEPA等を含む良質の油が多い

 ・ミネラルとして、肉は鉄や亜鉛等が、乳・乳製品にはカルシウムが豊富

 ・炭水化物(糖質や食物繊維)はほとんど含まない

B.植物性タンパク質食品(大豆製品、種実類、米、小麦など)

  ・タンパク質源として、大豆は良質だが、米や小麦はリジンが不足

 ・デンプンや繊維質を含む物が多い

 ・脂質は種実類を除き少ないが、含む場合は良質(ω3系脂肪酸等)

 ・水溶性ビタミン(B群やC)やミネラル(カリウム等)を含む

 

一日のタンパク質摂取量は60g程ですので、なるべく3食で20g前後ずつを分けて摂り、かつタンパク源は動物性と植物性を組み合わせて満遍なく、が理想です。特に卵と大豆(納豆・豆腐等)は、毎日欠かさず摂るように心掛けてください。

一食でのタンパク質摂取量の具体例を示します。

 ・食パン(6枚切り)1枚に納豆(30g)1包と牛乳(200mL)1杯 → 約18g

 ・飯(150g)1杯に牛ステーキ(ヒレ100g)1枚とサラダ(コールスロー50g) → 約23g

 ・きつねうどん(400g) → 約12g → ゆで卵(60g)1個加えると+約6g

 

いずれにしても、タンパク質は体に必須の栄養素です。摂取不足は筋肉量が落ちる等から連鎖して重篤になります。特に高齢者に限っては、フレイル予防のためにも体重1kg当たり1.2g位を目安にすると良いでしょう。しかし過剰な摂取(特に動物性)は、肝臓や腎臓の負担になって骨粗鬆症のリスクも高まりますので、上手に選択するようにしましょう。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

体に必須の栄養素「タンパク質」の重要性とは?(その2:摂取の考え方)

前報で体のタンパク質は作られては壊されていて、常に日々新しいタンパク質を作る必要があること、そのためには体内で材料であるアミノ酸、特に必須アミノ酸が不足しないようにすること、を明らかにしました。

 

では毎日の食事のタンパク質摂取において、何をどう気をつければ良いのでしょうか?

 

まず量的な面では、毎食「主菜(おかずでタンパク質が主体)」を意識して摂ることです。肉(牛・豚・鶏など)や魚、それらの加工品が直ぐ浮かびますが、卵や大豆製品(納豆など)、乳製品(チーズなど)もそうです。特に朝食や昼食を簡単に済ますことの多い方は、ほぼ主食だけで主菜が疎かになっていると思いますので、気をつけてください。

 

さて問題は質の方で、量が満たされれば良いとは言えないのです。つまり、タンパク質摂取の目的は、体内でのタンパク質合成がスムースに行われるように、その材料である20種類のアミノ酸を揃えて蓄えることです。特に体内で作られない必須アミノ酸が不足しないように意識しないといけません。

その指標となるのが、各タンパク質のアミノ酸スコアでしたね。その値が100であれば9種類の必須アミノ酸が全て充分に揃っている(良質のタンパク質)ので問題はないのですが、中には100に満たない、下手をすると50を切るタンパク質もあります。

 

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例えば主食になる米は65で小麦に至っては40です。共に第一制限アミノ酸がリジンなので、その含有率の値がそれぞれのアミノ酸スコアになっています。しかし、いずれのタンパク質もリジン以外の8種類は極端に低くはないので、リジンの多いタンパク質(肉・魚・大豆)を同時に摂取すれば大丈夫です。

 

要はアミノ酸スコアの低いタンパク質でも、その第一や第二制限アミノ酸が何であるかを知り、それを補う工夫をすれば良いわけです。結局、食事の基本である主食とバラエティーに富んだ主菜をしっかり組み合わせる(副菜も添えて)ことに尽きます。

次の最終報では、より具体的なタンパク質の上手な摂り方を紹介します。

体に必須の栄養素「タンパク質」の重要性とは?(その1:推奨量と質)

コロナ禍で不要不急の外出自粛が要請されている中、筋力を保つ上でも欠かせない「タンパク質」の重要性を、今一度再認識して頂きたく、3報に渡って紹介します。

 

そもそも「タンパク質(protein)」の語源は、ギリシャ語の「proteios」で「第一の」とか「最も重要な」を意味します。つまりタンパク質はヒトの体の栄養において、他の三大栄養素である糖質や脂質よりも、重要な働き(体を形作る:例えば筋肉・血液・酵素など)があることの反映です。6つの基礎食品では第1群(タンパク質源)に分類されます。

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食事摂取基準(2020年版)によると、18歳以上の1日推奨量は男性で60g、女性で50gになります(体重1kg当たり1日1g)。エネルギー比率では男女とも13~20%です。

 

一方質的には「アミノ酸スコア」が一つの基準になります。一般にタンパク質はアミノ酸が多数(数百~数万)連なっている高分子です。そのアミノ酸は20種類で、その内、体内で作れない必須アミノ酸は9種類あります。アミノ酸スコアとは、タンパク質に含まれる各必須アミノ酸含有量をアミノ酸評定パターンと比較し、最少含有率のアミノ酸(第一制限アミノ酸)の数値がアミノ酸スコアになります。その最小値が100を上回っても、アミノ酸スコアは100で最大です。 

 

このことを桶モデルで説明します。

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必須アミノ酸の数と同じ9枚の立て板でできた桶があります。個々の立て板の高さがタンパク質の各アミノ酸含有率を反映していて、高さはまちまちです。この桶の中に溜まる水の量がタンパク質の質を現しますので、最も低い高さの立て板つまりアミノ酸含有率がアミノ酸スコアとなるわけです。

この意味するところはタンパク質の代謝との関わりです。ヒトの体の20%はタンパク質でできていて、日々作られては壊されています。毎日食事から摂るタンパク質は消化・吸収されて各アミノ酸に成り、新しく作られるタンパク質の材料になります。その際に20種類のアミノ酸が揃っていないと、タンパク質の合成に支障を来します。言い換えれば、タンパク質合成は最少のアミノ酸によって制限されることになり、そのアミノ酸は体内で作ることができない必須アミノ酸である確率が高い、ということになります。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

次報では、タンパク質摂取における基本的な考え方を紹介します。

 

感染症対策:免疫力を高める食事とは?

コロナ禍の中、もし感染したら大丈夫なのか、と不安に感じている人も多いはずです。そこで、体を病気から守るとされている「免疫」について、改めて紹介します。

 

免疫とは、疫(病気)を免れることを意味しています。免疫力はその能力を表し、加齢はもちろんストレスや生活の悪習慣によって低下します。免疫力が低下すると、感染症だけでなく様々な病気に罹りやすくなることは言うまでもありません。

 

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そもそも免疫は、自然免疫と獲得免疫の2種類に分けることができます。

体内に入ってきた病原体に、最初に反応するのが自然免疫で、それから逃れた病原体に対応するのが獲得免疫です。前者の免疫細胞には病原体を食べるマクロファージ(貪食細胞)があり、後者ではTやB細胞が主役で、病原体を認識して抗体を産生することで免疫力を発揮します。

 

免疫力を高める食事に言及するに及んで、前提となる二つのことを頭に入れて欲しいと思います。

一つは免疫力の約70%は腸にありますので、腸内環境を良好に保つ(腸活)必要があると言うことです。もう一つは免疫力を高く保つには平熱を37℃前後に保つ(低いと良くない)必要がありますが、それには消化吸収や代謝に関わる酵素や筋肉の供給を絶やさないことです。

 

では具体的にどんな食事をすれば良いのでしょうか。

上記の一つめに関連しては、腸内細菌の餌となる発酵食品(善玉菌が豊富)や食物繊維、オリゴ糖を摂ることです。二つ目に関連しては、まず酵素や筋肉の材料になる良質のタンパク質です。またそのタンパク質を有効利用するためのビタミン類やミネラル類も必要になります。

さらに、ポリフェノールω3系不飽和脂肪酸も有効ですし、コレステロールも欠かせません。要はこれらのことを踏まえて、バランスの良い食事をすることに尽きます。

 

食事に加えて、しっかりとした睡眠を取ってストレスを緩和することや適度な運動をして筋力をつけることが、免疫力を高めるためには必要なことですので、心して実践してください。

(なお、本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)