Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

GI値に関わる食事の続報、「低GI食」は脳にも良い!

前報で、高GI食(ほぼ高GI食品のみの食事)は食後血糖値の急激な上下動、いわゆる「血糖値スパイク」を引き起こすので、避けるべきであると結論づけました。

 

従って必然的に高がダメなら低GI食が良いということになりますが、より積極的に勧める理由があることを、本報で明らかにします。

 

                 

    (高および低GI食品の詳細は前報を参照ください)

 

脳のエネルギー源はブドウ糖で、不足するとケトン体も利用されるのですが、それは脳の一部に過ぎません。

よって脳をしっかり働かせるためには、糖質を充分に摂る必要がある訳です。

ところが短絡的に、上述の高GI食をはじめ主食や甘い物のドカ食いをすると、血糖値スパイクを引き起こして「低血糖」になり、脳のエネルギーも補足してしまうのです。

結果的に、脳が司っている集中力、記憶力、実行機能などが衰えることに繋がります。

 

そこで低GIを意識して摂る低GI食の出番です。

 

主食でいえば、高GIの精白米や食パン、うどんよりも低GIの玄米や全粒粉パン、そば(いわゆる、白い物より黒い物)がベターなことは確かです。

ただいつも食べているご飯やパン(高GI?)を無理に止めなくても、主菜を含め食物繊維の多い野菜(ほぼ低GI)などを一緒(できればベジファースト、カーボラスト)に食べれば、低GI食の範疇と見なせ、低血糖は防げるはずです。

 

朝食に関していえば、低GI食にプラスしてトリプトファン」を含む食べ物を摂取することが望ましい。

トリプトファンは脳内で幸せホルモンのセロトニンを生成し、夜にはメラトニンに変化して睡眠を促します。質の良い睡眠は、脳のパフォーマンスを高めてくれるのです。

必須アミノ酸トリプトファンを多く含む食材は、朝食を念頭に置くと、大豆製品(納豆・豆腐油揚げ等)や卵・乳製品(チーズ・牛乳・ヨーグルト等)です。

 

間食にお勧めの低GI食品は、高カカオチョコレートとナッツ類です。

チョコレーは血糖値を上げるイメージがありますが、原料のカカオには食物繊維が多いので、高カカオチョコレート(カカオ70%以上)はGI値が30以下の低GI食品になります。

またアーモンドやピーナッツ等のナッツ類も、糖質が少なくかつ食物繊維が多いのです。

さらに前者のカカオポリフェノールには、記憶力をアップさせる成分の分泌を促す効果があり、後者にはやる気ホルモンの原料になるチロシン(アミノ酸)が豊富に含まれていて、脳のパフォーマンスを上げるように働いてくれます。

日中、やる気が起きなかったり集中力が続かなかったりした際には、これらを「チョコッと食べ」してみましょう。

 

いずれにしても、低GI食にメリットが多いことは確かですが、全ての食事を低GI食品に徹底すると栄養バランスが崩れる危険性もあることを、頭の隅には入れて置いてください。

 

(本情報の大半は、西 剛志著:低GI食 脳にいい最強の食事術(アスコム,2021.12.18)を参照・引用しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

血糖値に関わるGI値とは?、特に高GI食は避けるべき

当該ブログでは、配信済みの十数報に渡って「GI値」を引用していますが、その詳細はインターネットで確認してください、と託していました。

 

そこで本報では、GI値のことを改めて確認し、主に高GI食は避けるべきであることを紹介します。

                                    

                               

 

そもそもGIとは、Glycemic Indexの略で、食後血糖値の上昇を示す指標です。

食品に含まれる糖質の吸収度合いともいえ、高GI食品は糖質が速やかに吸収されることによって食後に血糖値が急上昇するが、逆に、低GI食品は食後血糖値が穏やかに上昇するのです。

 

食後高血糖になるとインスリンというホルモンが分泌されて、血糖値を下げるだけでなく、脂肪合成を促進しかつ脂肪の分解を抑制します。従って、糖尿病や肥満に繋がるわけです。

 

GIとは、ブドウ糖(最も血糖値を上げる糖)摂取後の血糖値上昇を100とした相対値で、次のように定義しています。

 ・高GI:70以上・中GI:56~69・低GI:55以下

 

糖質の多い主食や甘い果物は高GIと思いがちですが、食品単位にすると、糖質の種類(果糖のGI値は20程度)や糖質以外の含有成分によってGI値は変ってくるのです。具体例は次の図の様になります。

 

                              (https://kops-fukuoka.jp/column/49より引用)

 

上記以外では、肉類・魚介類や大豆製品、乳製品・卵、海藻類やキノコ類は概ね低GIです。

 

このように見てくると高GI食品は、普通に食べられている主食やそれに近いトウモロコシやじゃがいも位であることを、先ずは認識してください。

 

そして、ほぼそれらしか食べないのであれば食後に急激な高血糖を起こしますが、例え精白米や食パンを主食にしても、GI値の低い主菜に野菜や果物、豆類、乳製品などを組み合わせることで、それを防ぐことができます。さらに食べる順で、ベジファーストカーボラストを心掛ければなおさらです。

 

食後の高血糖血糖値スパイクと謂われており、インスリンの大量分泌を促して、長期的には上述の重篤な状況になるし、短期的には低血糖に陥ることで、眠気や頭痛・吐き気といった症状が起こり、最悪意識がもうろうとして気絶してしまうこともあるので、絶対避けるべきなのです。

 

改めて、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食のバランスを。」のキャッチフレーズを噛み締めましょう。

 

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

高カカオチョコレート、小分け食べが効果的!

当該ブログで、「カカオ豆の健康効果を活かすのは、どんなチョコレート?」と題して配信済み(2021.2.19)の記事の中で、次の二つのことを結論づけました。 

 ・常食するのは高カカオのダークチョコレート

 ・一日数回に分けて食べるのがベター

 

本報では、上記二つの結論について、より具体的に掘り下げようと思います。

 

      

 

先ず高カカオチョコレートの定義ですが、明確な基準はなく、一般的にはカカオ濃度70%以上のチョコレートを指します。一方、普通のミルクチョコレート等のカカオ濃度は30~40%です。

 

ちなみに、両者の栄養成分(1日分:25g当たり)を比較すると、次の様です。

食品/成分  エネルギー   タンパク質   脂質   糖質   食物繊維   CPP*
   (単位)      (kcal)        (g)       (g)     (g)        (g)       (mg)
高カカオ      140          2.5        10.0      8.0       3.0          635
ミルク          142          1.9          9.2    12.3       1.1          172
                                   *CPP:カカオポリフェノール

 

エネルギーやタンパク質、脂質は両者の間に大差はないが、ミルクチョコには糖質が多く、高カカオチョコには、ミルクチョコに比べて食物繊維が約3倍、さらにカカオポリフェノールが約4倍多く含有している。

 

高カカオ(ダーク)チョコの健康効果(冒頭の既報でも言及)ですが、カカオポリフェノールの効能を要約すると、次の3つです。

 ・抗酸化作用による老化防止・血圧低下・動脈硬化予防

また、食物繊維には便秘予防や腸内環境改善効果が期待でき、糖質は低GIで脂質は体脂肪に成り難いので、ダイエット向きとも言えます。

 

二つ目の結論の「小分け食べ」が効果的な理由を説明します。

一つは、ポリフェノール類の効果は摂取後3,4時間で切れるので、1日数回に分けて食べるとその効果が持続するからです。

もう一つは、高カカオチョコには上記にプラスして血行促進、集中力アップ、ストレス緩和・リラックス等の効能も期待できるので、起床してから就寝までの随所でその効果を発揮してくれるからです。

例えば(*)、朝一の目覚ましチョコ、食事前のチョコファースト(ベジファーストもありですが・・・)、おやつタイムのごほうびチョコ、晩酌のお供に高カカオチョコ、おやすみ(就寝前より1日の終わりという位置づけで)チョコなどです。

 

最後に、1日の摂取量は25g程度がベターで、健康効果が高いからといって過食は禁物。具体的には、1枚の板チョコをその都度割って食べるよりも、個包装の1片5gを数回食べるのがお勧めです。

 

高カカオ(ダーク)チョコレートの効能を把握して、1日の随所で小分けに食べることで、健康な生活を過ごす一助にしては如何でしょうか。

 

((*)8760:高カカオチョコレートの「チョコちょこ食べ」(2022.7.9)を参照しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

夏野菜の「トマト」と「オクラ」、それぞれの健康効果は?

夏野菜と言えば、先ず赤くて丸い「トマト」が浮かびますが、緑で角形の尖った「オクラ」も7~8月が旬なので見逃せません。

 

そこで本報では、そんなオクラをメインに、トマトもリブログで情報提供します。

 

          

 

オクラと言えばネバネバ野菜として知られていますが、市民権を得たのは50年ほど前と、比較的新しい野菜の部類に入ります。

 

このネバネバの成分が、オクラの健康効果の大半を担っているとも言えます。

 

それは、ムチンという多糖タンパク質やペクチンという水溶性食物繊維です。

ムチンには胃の粘膜を保護する作用があり、ペクチンには腸内環境を改善する作用があるので、両者相まって、夏場の弱った胃腸を整えて食欲を増進する効果が期待できるのです。

さらにムチンは、抗ウイルス作用やタンパク質の吸収促進による疲労回復効果も示されています。またペクチンにも、血糖値や血中コレステロールの低下作用が知られています。

 

β-カロテン(プロビタミンA:トマトの赤い色素リコピンも仲間)が豊富で、抗酸化作用により紫外線の害から皮膚や目を守ってくれます。

 

その他、ビタミン類では葉酸(水溶性のビタミンB群の一種)、ミネラルではカルシウムが野菜としては多い方です。

 

ちなみに、オクラを加熱する場合には考慮が必要です。すなわち、ネバネバ成分のムチンもペクチンも水溶性で熱に弱く、またβ-カロテンは脂溶性で熱には強いので、両者は真逆の性質なのです。従って、新鮮な内に生食(*)するのがお勧めかも?

 

トマト」に関しては、「夏野菜のトマトは、リコピン効果で優れた食材」として配信済み(2021.7.16)ですので、閲覧してください。

 

いずれにしても、これらの夏野菜を摂ることが、厳しい夏場を乗り切る一助にはなっても全てではないので、常に発している「健全な食事と良質な睡眠」を心掛けて実践することが重要です。

 

((*)フーディストノート:オクラって生で食べられますか?(2020.6.28)を参照願います。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

伝統食材「梅干し」には2種類あり、夏場にはうってつけ!

「梅」の収穫時期になりました。この時期の雨によって梅の実が熟すことから、梅雨(つゆ)と呼ばれるようになったとか。

 

梅干し」が伝統食材と謂われる所以は、平安時代に書かれた日本最古の医学書に梅干しの効能が取り上げられていて、戦国時代には携帯食として重宝され、かつ江戸時代には庶民の間にハレの日の福茶(梅干し入り)として広まったからです。

 

当該ブログでも「梅の健康効果」として配信済み(2020.8.29)ですが、本報では改めて「梅干し」としてクローズアップします。

         

         

 

梅干しとは、梅の実を日干しして塩漬けにした物をいい、日干しせずに塩漬けした物は梅漬けと呼ばれます。

 

梅干しに適した代表的な梅の品種は「南高梅」です。皮が薄くて果肉が柔らかい上に、種が小さいので食べ応えがあります。

 

梅干しの規格としては、「梅干し」と「調味梅干し」の2種類があります。

 ・梅干し:古来からの製法で作られた原材料が梅と塩のみの物。塩分濃度は20%前後と高く、強い塩気と酸味がある。

 ・調味梅干し:上記の梅干しを塩抜きし、シソや昆布さらに食品添加物等の調味料で漬け込んで味付けした物。減塩のニーズに合い、かつ食べやすい

 

市販の上記2種類の商品表示を見比べてみると、次の様です。

左の梅干し(しそ梅)は、梅と塩以外には紫蘇のみで、塩分は18.9と高い。

一方右の調味梅干し(昆布風味)は梅・塩・昆布エキス以外にも、砂糖等の糖質系甘味料に人工甘味料、さらに調味料や酸味料等も添加されていて、塩分は7.4です。

 

塩分の過剰摂取が問題視されて久しく、健康のための適塩は1日に6g前後と言われています。

梅干し1粒の可食部は10g前後で、前者の梅干しでは塩分2g弱になるので、1日に1がせいぜいです。普段できれば、多少の塩抜きをしたり、塩味調味料を兼ねて料理に使ったりして食べるのがベターでしょう。

では減塩タイプの調味梅干しがお勧めかというと、一概にそうは言えません。

調味梅干しは、梅干しを塩抜きしてから化学調味料等から成る調味液に漬けて作られ、塩分が少ない分保存性も下がります。塩分は5%~10数%と様々で、調味液等の添加物も千差万別なので、表示を注視して選択すべきです。

 

いずれにしても梅干しの効能は、ことわざで「一日一粒で医者いらず」や「梅は三毒を断つ」などと謂われています。実際、酸っぱい成分のクエン酸には疲労回復食欲増進効果の他に食中毒予防効果もあり、また高塩分も汗で失われた分の補給になり、特に夏場にはうってつけと言えます。

 

より具体的な他の効能や摂り方は、冒頭の配信済みブログで確認して頂くとして、最後に、夏バテ・熱中症予防効果の飲み物として注目の「梅干しミルク(*)を紹介します。

 ・材料:梅干し 1(正味10,塩分1)、砂糖 大さじ1+1/3杯、牛乳 200mL

 ・作り方:梅の果肉をペースト状にしてグラスに入れ、砂糖(蜂蜜で代用も可)を加えて混ぜ合わせる → 冷えた牛乳を注いでよく混ぜてから飲む

これがあくまでも基本で、梅干しの塩分の違いにより甘味料の量も自分好みに合わせれば良いので、是非、試してみては如何でしょうか。

 

(*)毎日が発見ネット:梅干しミルク(2021.8.1)より引用・改編しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

梅雨明け前からの異常な猛暑、「暑熱順化」と「水分補給」は?

今年の梅雨入りは平年と同じかやや遅れた位でしたが、雨はあまり降らずに気温が上昇を続けており、連日に渡って真夏日(30度以上)はおろか猛暑日(35度以上)も珍しくありません。

 

そんな状況の中、熱中症患者の救急搬送が頻繁にニュースに取り上げられていて、注意を促しています。

例年なら、7月の半ば頃に梅雨が明けて徐々に真夏日猛暑日が増えていき、体も自然と慣れていくのですが、今年の異常気象では追いつきません。

 

そこで本報では、一足早く熱中症対策としての「暑熱順化」と「水分補給」について紹介します(なお昨年、“コロナ禍の熱中症対策、暑熱順化と水分補給は?”と題して配信済み(2021.7.23)の更新リブログになります)。

 

 

 

 

先ずは、あまり聞き慣れない暑熱順化についてです。

暑熱順化とは体が暑さに慣れることです。

暑熱順化がすすむと、発汗による気化熱や体の表面から熱を逃がす熱放散がしやすくなり、熱中症になりにくい状態になります(下図参照)。 

 

       (「熱中症ゼロへ」のHP:暑熱順化から引用)

 

暑熱順化に有効な方法とは、「積極的に汗をかく」ことで、具体的には次の様です。

 ・ウォーキングやジョギング:週に5回、1回に付き前者は30分で後者は15分程度

 ・サイクリング:週3回、1回30分程度

 ・筋トレやストレッチ:ほぼ毎日、1回30分程度

 ・入浴:2日に1回、38~40℃のお湯に10分以上浸かる

これらの方法を複数組み合わせ(入浴+どれか一つ)て、10日から2週間程度続けることで暑熱順化が出来るはずです。ただ、数日汗をかくことをしないと効果が無くなるので、無理をしないが前提ですが、続けることが必要です。

 

もう一つの熱中症予防策は「水分補給」です。

 

そもそも、生命維持に必要な水分量は1日に約2.5L(リットル)で、その内食事とそれに伴う代謝で約1.3Lの水分を摂取できるので、残りの約1.2Lを飲料水で毎日摂る必要があります。

特に湿気の少ない夏場の暑さの中ではじっとしていても、運動をすればなおさら、汗をかいて水分が失われるので、その分多めの補給が必須です。

 

起床時から就寝時までの水分補給(飲料水+食事の汁物)のタイミングは次の様です。

          (hokusei.or.jpのホクマンブログより引用)

 

具体的には、

 ・起床時 → 白湯を0.2L(200mL)

 ・入浴後や就寝前 → ノンカフェインの茶類を0.2L

 ・朝・昼・夕食時 → 主菜に合わせて味噌汁やスープ、牛乳やジュース等を0.2mL、

 ・10時や15時の前後:おやつ → 和か洋かに合わせて、緑茶やコーヒー・紅茶等を0.2mL、おやつ以外の運動等 → 運動量に応じて、適した飲料水(*)をこまめに少しずつ

 

水分補給といっても、単に水気のある飲料をがぶ飲みさえすれば良いわけではなく、ケースバイケースです。

特に、カフェイン入り飲料や糖分の多い清涼飲料やジュース、アルコール飲料も過剰摂取は禁物です。さらに、大量の汗をかく前後には、(*)経口補水液スポーツドリンクなどの適度に塩分と糖分を含んだ飲み物がベターで、水分が速やかに吸収されます。

 

ともかく、喉の渇きを感じた時には既に脱水が始まっているので、早め早めの対処を心掛けてください。

 

いずれにせよ最優先されるのは、健全な食事と質の良い睡眠ですので、くれぐれもお忘れなく!

 

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

寿命を左右するのは「腸内細菌」、その条件や食事との関係は?

腸内細菌やその細菌叢である腸内フローラのことについては、当該ブログでも過去数回に渡って紹介してきました。もしあやふやであったりよく知らないならば、先だって「免疫力向上に繫がる腸内環境を整える(「腸活」)には?」(2020.12.4配信)を読んでください。

 

本報では、最近明らかになった「腸内細菌と寿命との関係」について言及します(*)。    

       

          

 

先ず、現状で長寿と関係する腸内細菌の条件は次の2つです。

  • 菌の種類や数に多様性があること
  • プロテオバクテリアという種類の菌が少ないこと

 

腸内細菌の細菌叢(腸内フローラ)の構成は、善玉菌・悪玉菌・日和見(前2者の優勢な方に同調する菌)がほぼ2:1:7の割合が理想的で、多様性の低下と健康の悪化には相関が見られるとのこと。

 

プロテオバクテリアには、大腸菌サルモネラ菌ヘリコバクターピロリ菌など病原性や炎症を引き起こす細菌が含まれる。これらの菌類が多いと死亡率が上がるとのことなので、少ない方が良い。

 

さて、長寿に関わる腸内細菌を作る食事とは?

 

欧米の研究(日本ではまだ少ない)でエビデンスが最も多いのは「地中海食」です。

 

          (*)

 

イタリアやギリシャ・スペイン・モロッコなど、地中海沿岸地域で一般的に食べられている食事。野菜や果物、豆、穀類をバランスよく食べオリーブオイルをよく使ってワインを飲み、魚介類をメインに肉の摂取頻度が少ない食べ方をいう(上図参照)。

 

これまでに肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防・改善や、心筋梗塞脳卒中などの心血管疾患の予防に有用ということが明らかになっている。

これらの健康効果が腸内細菌叢を介してもたらされるという動物試験の報告もあり、サルを一定期間飼育した後に腸内細菌の違いを比較すると、地中海食群では西洋食(アメリカ中心の食)群に比べて明らかに菌の多様性が高かったという。

 

京丹後地域は、100歳を超える「百寿者」の割合が全国平均の3倍を超える長寿地域。ここの高齢者は野菜や果物、豆やイモ、全粒穀類や海藻を食べる頻度が明らかに多く、肉より魚をよく食べるという伝統的な日本食であり、地中海食との類似点が多い

さらに腸内細菌を分析すると、酪酸産生菌が多くてプロテオバクテリアが少なかったとのこと。酪酸菌が作る酪酸は、腸のバリア機能の維持や正常な蠕動運動を促すのに役立つことが知られている。

 

他にも日本人の健康には、麹菌が持つ成分を餌に増殖する菌やビヒィズス菌が多いことも長寿と関係していて、麹菌で発酵させる麹発酵食品(味噌や醤油、甘酒など)は日本特有のものである。

 

日本人の腸では日本人の食生活に合う菌が、寿命短縮に関わる有害菌の増えにくい環境作りなどで長寿を支えているのではないか、と考えられる。

 

((*)日経Gooday:細菌と私たちのふか~い関係(内藤裕二京都府立医科大教授,2022.5.10 & 5.13)を参照し引用・改編しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)