コーヒーは健康に良い?悪い?(その1:コーヒー悪者説からの変遷)
コーヒーは日本のみならず世界中で愛されている飲み物ですが、「健康に良いのか悪いのか」、「1日に何杯までOKなのか」の論争はつきません。
そこで本報では、最近の研究成果に基づいたコーヒーにまつわる情報を提供します。
そもそもコーヒーはタバコや酒と同様の嗜好品とされ、「何となく体に悪そうな飲み物」という印象を持たれていました。それを後押ししたのが、1980年代前半の北欧での「コーヒーが心筋梗塞を引き起こす」という報告です。当時は挽いたコーヒー豆を鍋で煮出していたので、精油成分も摂取したためと言われています。要するに、コーヒー豆を高温で抽出してそのまま油分ごと飲むのが良くないので、今日でもフレンチプレスやエスプレッソは飲む頻度を控えた方が良さそうです。フィルターなどでドリップすれば油分は除かれますので、健康を意識するならお薦めの方法になります。
21世紀に入った頃から「コーヒーは健康に良い」という研究が出始めました。中でも2002年ロブ・M・ヴァンダム(オランダ)らの「コーヒーを1日7杯以上摂取する人は、2型糖尿病の発症リスクが1日2杯以下の人の約1/2になる」という報告や、その後の追跡調査での「コーヒーを1日6杯まで摂取した人でも、がんや心血管疾患などによる死亡リスクには関係しない」という結論が、コーヒー悪者説を払拭したと言えるのではないでしょうか。
日本でも2005年に国立がん研究センターが、「コーヒーをほぼ毎日飲む人では肝臓がんの発生率が約半分になり、1日5杯以上飲む人は約1/4まで下がる」ことを発表しました。
その後もコーヒーに関する疫学調査が進みました。特に大規模前向きコホート研究という信頼性の高い研究で、コーヒーの飲用でリスクの下がる疾患が、上記以外にも脳卒中・パーキンソン病・うつ病・メタボリック症候群など多方面に及ぶことも明らかになりました。
こうしてコーヒーは健康な飲み物として定着したと言えそうですが、カフェインの影響などにも注意が必要ですので、次報ではコーヒーの成分的な話に言及します。
(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)