Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

今話題の抗老化成分「NAD・NMN」とは?、食事で摂れるの?

最近のテレビ番組(*)でも取り上げられて話題の抗老化成分「NAD・NMN」ですが、老化を遅らせる様々なエビデンスは納得できても、それらの成分がどんな物質なのかは?のままでした。

 

そこで本報では、NADとNMN(いずれも略称)がそもそもどんな物質なのか、それらが食事で摂れるのかについて、情報提供します。

 

少し専門的になりますが、NADコチンアミド デニン ヌクレオチドNMNコチンアミド クレオチドで、それぞれ下線の英語の頭文字を並べたものです。いずれも語尾にヌクレオチドとあることから、核酸系の物質であることが判ります。

 

重要なのはNADの方で、ヒトの体内でエネルギーなどを生み出す酸化還元反応補酵素の役割を担っていますが、加齢に伴って減少していくようです。

そもそも酵素反応には、酵素タンパク質だけで進行するタイプと補酵素を必要とするタイプがあります。補酵素とは酵素(enzyme)を補う訳ですが、酵素反応が進行するために補酵素の存在は必須で、不在なら進行しないのです。補酵素は coenzyme、つまり共同酵素と言うことからも解ります。

 

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例えば、酒の成分であるエチルアルコールが体内で最初に受ける酸化反応を挙げます。

   CH3CH2OH + NAD ―→ CH3CHO + NADH2

    (エチルアルコール)             (アセトアルデヒド)

この反応はアルコール脱水素酵素が行いますが、補酵素であるNADが脱した水素(H2)の受け手になり、無事に反応が進行する訳です。

 

このように、NADは体内の様々な酸化還元反応補酵素として必須な訳ですから、不足すると重大な影響(老化など)が現れるはずですし、直接サーチュイン(老化や寿命を制御する酵素で、その遺伝子は長寿遺伝子)を活性化することもマウスの研究ですが判っています。

 

一方NMNは、体内でNADに変換する物質という位置づけで、NADのままで摂取しても取り込まれ難く、前駆体のNMNが注目され各種のサプリも販売(高価?)されています。

 

最後に、食事で体内のNADを増やす方法を紹介します。

NADもNMNも食品からの必要量摂取は期待できませんので、NADの原料であるナイアシン(ビタミンB群の一種:B3)を多く含む食品を摂取することが現実的です。

ナイアシンは、魚介類・肉類・きのこ類・穀類などに多く含まれています(**)。

では現実のナイアシン摂取(1日の概算)はというと、男女とも平均30mg前後で、推奨量

10~15mg(耐容上限量 数百mg)を充たしている状況なのです。

 

要するに、NADは健康で老化を遅らせるためには必要不可欠な成分ですが、一日三食をしっかり摂っている方は、新たに対応しなくても良いことになります。ナイアシンを多少多く摂るようにしてもOK(上記の耐容上限量は意識)ですが、慌ててNMNのサプリに走るのは不必要でしょう。

ただ、食生活が乱れている方や偏食の方は、この際、食事の見直しをしてみることをお勧めします。

((*):羽鳥モーニングショー,10/18放映分、(**):hfnet,ナイアシンをフォローしてください。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)