Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

発酵茶の「紅茶」、最新研究で判ったコロナウイルスの不活化効果

「お茶」に関しては当該ブログでも、麦茶(2020.5.29)、抹茶(2021.9.17)をはじめ、つい最近も茶類、ほうじ茶と連載してきました。

 

そして、お茶の次報(本報ですが)は「紅茶」と決めていました。

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それは1年少し前ですが「お茶(特に紅茶)でコロナウイルス無害化を確認」という情報(奈良県立医大,2020.11.27)を得ていたからです。

さらについ先週のことですが、「紅茶がわずか10秒で新型コロナの感染力を低下」という報告(*)がありました。

 

まずはこの2つの研究成果の具体的な内容を見ていきます。

  ・奈良県立医大の手法は、試験管の中で新型コロナウイルスの液と市販のお茶を混ぜ、時間経過とともにウイルス感染価を評価しました。その結果、紅茶では1分後に、大和茶では10分後に、緑茶では30分後に、新型コロナウイルスの99%が不活化することを確認しました。ポリフェノールの一種であるカテキンが影響していると推測されるとのこと。

  ・後者の手法は、粉末の緑茶や紅茶の溶液(飲用濃度の1/3以下)と紅茶のティーパック抽出液を新型コロナウイルスと一定時間作用させ、抗ウイルス活性を調べました。結果は下図のようになりました。縦軸が感染力の強さで、横軸は作用時間(m:分,s:秒)です。

   f:id:dr-tomu:20220204154505j:plain (*) 

 

この図から、粉末緑茶溶液では感染力を持つウイルスの数を検出限界近くまで減少させるのに10分必要でしたが、粉末紅茶溶液と紅茶ティーパック抽出液では、共にわずか10秒しかかからなかったことが判ります。また興味深いのは、上図にない①は20種類の茶ポリフェノール溶液なのですが、新型コロナウイルスの感染力価はあまり低下しなかったとのこと。

つまり、ウイルス感染力の低下は、①の単体のポリフェノールよりも、②,③,④のような複数のポリフェノールの存在(精製品でなく天然のまま)がより効果的であることを実証したわけです。

 

どちらの手法も、いわゆる試験管内の結果でしかないので、紅茶を飲めばコロナへの感染予防が出来るとするのは早計かもしれません。ただ10秒でウイルスが不活化されるわけですから、紅茶でうがいをするとか含み飲み(京都府医大・松田教授が提唱)をすると、その効果が期待できるはずです。

 

紅茶で特有な成分は、カテキンが発酵することで変化したテアフラビン(ポリフェノールの一種)で、近年の研究では血糖値上昇や脂肪吸収の抑制効果があることが判っています。

また、紅茶にはバラやジャスミン香り成分が含まれており、リラックス(アロマテラピー)効果に結びつきます。

 

コロナ禍の終息が見通せない昨今、紅茶が本来の効能に加えてコロナにも効くことを心得ておくと、実生活で活用の幅がより広がるのではないでしょうか。

((*)PRESIDENT Online:「わずか10秒で新型コロナの感染力が低下する」大学教授が予防効果アリと期待する"ある飲み物"(2022.1.28)。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)