需要拡大のアルファ米とは?、デンプン変化との関わり
先日の新聞(*)に「アルファ米 需要拡大」との見だしで、以前の防災備蓄用から、最近は登山やスポーツ・海外旅行用にと需要が拡大している、との記事が掲載されました。
「アルファ米」って何?、と思われた方も多いのではないでしょうか。もちろん、その記事には「お湯や水を加えるだけでご飯ができる」とありますが・・・?
このアルファ米を説明しようと思えば、デンプン変化との関わりに言及する必要があります。
そこで本報では、デンプンの構造とその変化からアルファ米までを解説します。
まず、デンプンですが、主食のご飯やパン・麺類などの主成分でエネルギー源なのは知っている方も多いでしょう。
デンプンは多糖類に属し、ブドウ糖(グルコース)が数百以上鎖状に連なった高分子で、直鎖状のアミロースと分岐鎖状のアミロペクチンから成っています(下図:一つの六角形がブドウ糖)。
(https://www.alic.go.jp/より引用)
アミロース(AL)は鎖が短いので水に溶け、アミロペクチン(AP)は鎖が長くかつ分岐も多いので水には溶けません。また、後者は前者よりモチモチ感があります。
ご飯として食べる「うるち米」はAL:AP=20:80(平均)だが、「もち米」はAP100なのも、納得できるはずです。
さて、アルファ米に話を移します。
アルファ米とは、米に含まれるデンプンをアルファ化(糊化)したご飯のことをいいます。つまり炊きたてのご飯をそのまま急速乾燥させたもので、水(温かく食べるには湯)を加えるだけで炊きたての食感と美味しさが戻るのです。
デンプンのアルファ化を説明しないといけません(下図参照)。
(https://study-z.net/より引用)
生米のデンプンは生デンプン(ベータデンプン)の状態だが、加水・加熱して炊くと水分子がアミロースやアミロペクチンの鎖の間に入り込んで糊の状態になる。この変化を糊化といい、ベータデンプンがアルファデンプンになるので、アルファ化ともいうわけです。
このアルファデンプンは、そのまま放置・冷却すると水分が抜けてベータデンプンに戻るので、この変化を老化あるいはベータ化といいます。
ベータ化したデンプンのご飯は、パサパサして美味しくないし消化できないので、(加水・)加熱してアルファー化しないといけません。
朝炊いたご飯(アルファ米)が美味しく食べられるのは、常温で数時間まで、炊飯器の保温で夕食までと思ってください。それ以上経つと、ベータ化や黄みを帯びるメイラード反応が進んでいきます。残るようなら、できるだけ早い段階にラップして、粗熱が取れたら冷凍(冷蔵はNG)してベータ化を防ぐべきです。
市販のパックされたご飯(サトウのごはん等)もベータ化しているので、そのまま加熱せずに食べてはいけません。
そこで登場したのが、災害時など加熱の手段がない時に、加熱しなくても美味しく食べられるのアルファ(化)米なのです。
具体例として、アルファ米の大手である尾西食品の商品を少し紹介(下図)しますと、白米はもちろん、炊き込みご飯やカレー等味付きご飯からおにぎりやお粥まで多彩です。
一食数百円と多少割高かもしれませんが、賞味期限は5年なので、この機会に非常用として手に入れ、試食してみてはいかがでしょうか。
((*)毎日新聞:アルファ米 需要拡大(2022.5.10)。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)