Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

若返りの鍵は「オートファジー」(その1:機能と維持する食事対策)

加齢と共に老化が進むのは避けられない、と思っている人が多いのではないでしょうか。しかし実は、「オートファジー」という細胞の若返り機能がヒトには備わっているのです。

 

2016年に、大隅良典東京工業大学栄誉教授がノーベル賞を受賞したことで脚光を浴びましたが、約60年前から研究が始まり、近年急速に成果が積み重なっている分野です。

 

そもそもオートファジーとはギリシャ語の「オート(自分」と「ファジー(食べる)」を組み合わせた言葉で、「自食作用」と訳されます。

要するに、「細胞が自力で自分を新品にする」機能のことで、その仕組みは下図のようですが、難解ならスルーしても構いません。

 

      (*)

 

オートファジーはヒトの体に約37兆個ある細胞のほぼすべてで起こっている生命現象であるということで、オートファジーの機能が滞りなく維持され、細胞の健康が守られれば、老化をスローダウンすることにつながる、と考えられます。

 

ただヒトの場合、60歳頃からその機能が急速に衰えることが判ってきたので、中年になり、できる有効な対策があれば講じるべきでしょう。

実はオートファジー(細胞のケア)に強く関わっているのが、「食事の摂り方」なので、紹介していきます(吉森保大阪大学栄誉教授の話)。

 

1.脂っこいものは摂りすぎない

 → 脂質は細胞の健康にとって必要なので、完全にカットするのではなく、揚げ物や肉の脂身は摂りすぎないようにする意識で良い。

 

2.腹八分目にする

 → カロリー制限が寿命延長に効果的で、そこにオートファジーが必要。但し、カロリーを抑えすぎると筋肉が痩せてしまうので、タンパク質など体に必要な栄養素が不足しないように注意し、脂質(特に揚げ物や脂身)や糖質から減らす。

 

3.空腹状態の時間をしっかり作る

 → 6時間の絶食でオートファジー上昇が起こる(マウスの実験)ので、昼食後の間食は控える意識をして夕食までの空腹感を感じれば良い。さらに長時間(極端には16時間)の断食は、血糖値スパイクのリスクがあるので、勧めない。

 

4.夜は満腹状態で眠らない

 → 夜眠っている空腹時にオートファジーが活性化するので、食後直ぐに寝てはいけない。食後オートファジー活性は一時的に下がり、その後寝るまでの間に徐々に戻って睡眠中はしっかり働く。

 

5.ウォーキングなど適度な有酸素運動をする

 → 運動が体に良いと言う情報は頻繁に耳にするが、有酸素運動によってオートファジーが活性化することが判っている(動物実験)。ヒトでの検証はまだだが、少なくともプラスの効果は見込めそう。

 

オートファジーは、我々の体に備わっている細胞の若返り機能で、老化抑制にも繋がっています。それが加齢と共に衰えていくのをタダこまねいていてはいけません。

上記の5つの対策(食事4に運動1)は決して面倒なものではなく、既に幾つかは叶えている方もいるでしょう。改めて今日からでも意識して実践することを、強く勧めます。

((*)朝日新聞デジタル(2016.10.3)より引用しました。本情報は日経Gooday:老化抑制のカギ「オートファジー」(2022.5.17から3報)を参照し引用・改編しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

 

次報では、オートファジーを活性化する身近な食品成分に言及します。