食物酵素(酵素サプリや酵素ドリンク)は効く?(その1:酵素の基礎知識)
そもそも酵素とは、生体内の化学変化を円滑に進める役割を担うタンパク質です。我々ヒトを含めた生物は体内に存在する酵素により、食べた物を消化し(消化酵素)体内に吸収した後、エネルギーに変換したり、必要な成分に作り替えたりする(代謝酵素)ことで、生命を維持しています。
酵素はタンパク質という大きな分子ですので、直接飲んだり食べたりしても酵素のままでは体内に入ることはできません。大半はアミノ酸にまで分解(消化)されてから体内に吸収されますので、酵素の体は成していないのです。また酵素が実際に働くには、反応する相手の物質との間に「鍵と鍵穴の関係」と言われるような精密な構造を維持している必要があります。この構造は熱(ほぼ50℃以上)や酸が加わることで崩れます(変性)ので、結果として酵素としての働きを失ってしまいます(失活)。従って、外から酵素を取り入れても、胃で強酸に曝されて変性を受け、さらに消化酵素による分解も受けますので、体内に吸収されて無事に働くことは皆無に近い、というのが結論です。体内酵素の不足をサプリやドリンクでは補えませんし、そもそも酵素は、食事からのタンパク質を分解してできるアミノ酸から必要に応じて合成されますので、不足することはありません。
食品にも酵素は含まれています(食物酵素)。大根にジアスターゼ(デンプン分解酵素)が、パイナップルやキウイ等にはプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が含まれている(いずれも)のは、周知のことですが、これらの酵素の活用はできないのでしょうか?
(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)
次報では、食物酵素の利用に関しての注意点を具体的に実例で紹介します。