Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

伝統的健康食の発酵食品(その2:発酵形式とその健康パワー)

前報で紹介した発酵を促す主役の微生物ですが、その繁殖の特質として、ある環境下に複数の微生物が生息していても、特定の微生物のみが繁殖を独占して他の菌の増殖を許さない、という拮抗作用が働きます。従って発酵を行う菌が優位に立てば、腐敗菌の増殖や侵入が抑えられ、発酵食品は腐敗せずに長期保存が可能になるわけです。

イメージ 1
 
またこの発酵の形式として、単発酵と複発酵があります。前者は1種類の原材料に単一の微生物が働くというシンプルな仕組みで、ヨーグルトや納豆の製造がそうです。対する後者は複数の原材料を段階的に発酵させるもので、複数の微生物が関与しそのパワーバランスを保つ高い技術が必要です。味噌・醬油や日本酒の製造がこれに当たり、特に日本酒は並行複発酵という形式で、デンプンの糖化とグルコースのアルコール発酵が同時並行で進行するので、醸造酒としては高いアルコール濃度になるわけです。ちなみにワインは単発酵で、ブドウ中のグルコース(ブドウ糖)酵母によりアルコール発酵したものです。
 
最後に発酵食品の健康パワーをまとめてみますと、1)腸内フローラの改善、2)ビタミン・抗酸化物質など体に良い成分の増加、3)保存性の高まりで風味や旨味が増え美味しさが向上、が挙げられます。
発酵食品は、主に微生物が作り出した産物が我々に有益な効果をもたらすのですが、微生物が生きていることもあります(漬物や納豆等)。しかし大半の微生物は、胃酸で死滅し腸まで生きて届くことはありませんが、死菌であっても腸内細菌の餌(食物繊維やオリゴ糖)になり、上述の1)に結びつくのです。結論的に言いますと、特に1)の効果で免疫力が高まり、2)の効果とも相まって生活習慣病予防やアンチエイジング効果にも繋がります。
 
動物性食品主体の欧米型の食事や手軽なファストフードが席巻する食生活の中で、より積極的な発酵食品の摂取を心掛けるべきでしょう。
(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)