Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

食物酵素(酵素サプリや酵素ドリンク)は効く?(その2:実効には限りあり)

前報で、酵素は食品であれサプリであれ、熱や酸に曝されたり(変性)、消化を受けて分解されてしまえば、その働きを失ってしまうことを紹介しました。
本報では、酵素が「変性と分解」という2つのハードルをクリアして、実効あるようにすることは可能か否かを検証してみます。
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 まず変性の過程ですが、熱による場合と酸による場合に分けられます。前者は調理で加熱する場合に限られますので、生のまま(非加熱)で摂食すれば避けられますが、後者の胃酸による変性は、酸に耐性がない限り、避けることができません
次に分解の過程ですが、これも避けることはできません。例え分解を免れて腸内に留まっても、タンパク質のままでは吸収できないので、やがて便として排出されてしまうだけです。従って、酵素が大きなタンパク質のままで体内に吸収されて働くことは不可能と言わざるを得ません。
 
結論として、市販の酵素ドリンクは予め加熱処理されていますし、酵素サプリも生酵素とか非加熱発酵とかを謳っていても、ほとんど実効はないでしょう。
ただ、生の食材も含めて消化酵素(主にデンプンやタンパク質等の分解を担う)の活用は可能です。そのまま生で食物と摂食した場合は、胃酸で変性を受けるまでの間(せいぜい数分間?)に消化を助けることができます。また、予め調理前に非加熱の前処理をすれば、その間の効果も期待できます(生肉とパイナップルを混ぜておくと肉が軟化等)。しかし、ビタミンC酸化酵素を持つキューリや人参は、生で他の食材と接触するとそのビタミンCを酸化分解してしまいますので、注意が必要です(詳細は当該ブログの「損失しやすいビタミンC(その2)」を参照)。つまり、酵素が働けるのは熱や酸に曝されるまでで、例えそれらに耐性を示す酵素であっても、消化を受けて分解されてしまえばそれまでなのです。