Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

静かなブームの「焼き芋」は寒い時が食べ頃?

寒くなってくると食べたくなるのが「焼き芋」ではないでしょうか? 一昔前には笛の音と独特の節回しで焼き芋を売り歩く姿が冬の風物詩でしたが、今やスーパーやコンビニでも手軽に年中買えるようになりました。

そんな静かなブームの中の焼き芋について、その栄養や効能を紹介します。

 

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焼き芋の材料は「サツマイモ」ですが、甘い芋は糖質多くて太ると思っている人が多いのではないでしょうか。

 

そこでまず、焼き芋に含まれる主な栄養成分(皮むき100g当たり)を挙げます。

・主要成分:エネルギー 163kcal,タンパク質 1.4g,脂質 0.2g,糖質 36.7g

・微量成分(1日の充足率約20%以上):ビタミンB6,C,E,カリウム

・その他、食物繊維 3.5g(水溶性 1.1g,不溶性 2.4g)

 

焼き芋は中くらいのサイズで200g程度です。確かに糖質が多く、しかも熱いままだとGI値が高い(血糖値が上がりやすい)ですが、冷ますことレジスタントスターチができて低GI値になります。

また、食物繊維が多いので糖質の吸収を抑え、サツマイモ特有の成分ヤラピンは緩下剤として排便を促すので、むしろダイエット効果があるとも言われています。

その他の含有成分による効能もあります。

・ビタミンC(芋では熱に強い)やEは、抗酸化力の高い成分でアンチエイジング効果がある

・豊富なカリウムは、過剰なナトリウム(塩分)を排出して高血圧やむくみ予防効果がある

・皮に含まれるポリフェノールアントシアニンやクロロゲン酸には抗酸化作用がある

 

この様な焼き芋の効能を最大限に活かす食べ方は、冷ましてから皮ごと食べるのがベターです。

 

最後に、家庭で焼き芋を作る方法を紹介します。ポイントは糖化酵素が充分に働いて甘くなるじっくり加熱です。最も手軽で短時間なのは電子レンジを使う方法です(1本を丸ごと洗って濡れたままで新聞紙に包み、500Wで1,2分温めた後200W(弱火)で10数分加熱)。

サツマイモの品類は、ねっとり系(安納芋等)やほくほく系(紅あずま等)、新種のシルクスイートもあり様々ですので、食べ過ぎ(残りは冷凍も可)には注意しながら、それぞれの味覚を楽しみましょう。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

古代からのスタミナ食「ニンニク」の健康パワー!

ニンニクと人類の付き合いは古く、紀元前からと言われています。日本に伝わったのは4,5世紀頃で、健康に重宝な特別な食材であったようです。

現在では日本各地で栽培されていて、料理の薬味として、その健康パワーが注目されていますので、改めて紹介します。

 

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ニンニクと言えば、独特の臭いがあって使用を控えることも多いはずですので、まず、その臭いのメカニズムを明らかにします。

臭いの元になる成分はアリインというアミノ酸です。ニンニクをすり潰したり刻んだりすると、アリインが酵素の働きでアリシンになって臭いを発するのです。従って、丸ままあるいは一片毎に加熱すれば酵素が失活し、臭いは発生しないのです。

 

では、ニンニクに含まれている栄養・健康成分からの効能を挙げます。

体力増強・疲労回復:糖質からのエネルギー代謝に必要なビタミンB1が、ニンニクのアリシンと結合(アリチアミン)して吸収率がアップし、エネルギーの補給が向上

血行促進・冷え予防:アリシンやビタミンEが血管を拡張し、血行促進や冷え予防に効果

抗菌作用・食中毒予防:刺身や馬刺しにすり潰したニンニクを加えるのは、アリシンの抗菌作用による食中毒予防

抗酸化作用・老化防止:アリシンやその加熱産物のスコルジニンは強力な抗酸化作用を有し、老化防止(アンチエイジング)に効果

その他、デザイナーフーズプログラム(米国,1990年)で、がん予防に重要度が高い食品である事も示されました。

 

ニンニクは、和食はもちろん洋食や中華までの炒め物や煮物に使えますが、弱火でじっくり加熱するのがポイントです。アリシンが変化(アホエンなど)し、さらに健康パワーがアップします。

またニンニクそのものだけでなく、乾燥させて粉末にしたガーリックパウダーや低温の油に漬け込んだガーリックオイルの加工品も大いに利用すべきです。

ただ食べ過ぎはNGで、1日に生ニンニクで1片、加熱ニンニクでは3,4片程度に留めてください。

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冬場に重宝な薬味「ショウガ(生姜)」の健康効果

気温が下がる冬場になると、体を温める働きをもつ「生姜(ショウガ)」が重宝されます。

そもそも生姜は、漢方では「百邪を防御する」と古くから処方されており、またデザイナーフーズプログラム(米国,1990年)では、がん予防効果の高い植物性食品の第一群にランクされていました。

そんな生姜の健康効果を、改めて紹介(更新リブログ)します。

 

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まず生姜の成分ですが、栄養素としてはビタミンB群やカリウムマンガン以外に、生姜特有の辛味成分が3種含まれているのが特徴的です。

1)ジンゲロール:生の生姜に含まれる辛味成分で、抗酸化作用を有していてアンチエイジング効果がある。体の表面を温める効果はあるが、発汗により後から冷めてくる。また強い殺菌力で食中毒予防になる。このジンゲロールは酸化されやすく、加熱によりショウガオールとジンゲロンに変わる。

2)ショウガオール:ジンゲロールと似た効能であるが、血行促進により体を表面ではなく芯から温める特徴がある。さらに脂肪燃焼などの新陳代謝を高める働きもある。

3)ジンゲロン:ショウガオールとほぼ同じ働きで、香りも有している。

 

生姜の健康効果は、生姜ブームの火付け役を自認する石原結實医師によると、次のようになります。

体を温める(血管を拡張して血流をよくし、すべての内臓の働きを活発にすることによる)白血球の働きを活発にして免疫力を高める強心・利尿効果により「むくみ」をとる消化吸収を促進する

発汗・解熱作用がある消炎(炎症を抑える)、鎮痛作用を発揮する吐き気をとめ、船酔い・つわり・抗がん剤による吐き気に奏効抗菌、抗ウイルス、抗真菌作用がある「めまい」に効く鎮咳作用を有する血栓症(脳梗・心筋梗塞)を防ぐ健胃作用・抗潰瘍作用がある脳の血流をよくして「うつ」に効く

 

最後に即効性のある利用法です。生のスライスやおろしは、殺菌作用による食中毒予防や消化・吸収の促進が、生姜湯や味噌汁などの温めた飲み物や煮物などでは体を温める効果が、期待できます。また最近では、作り置きできる酢生姜も万能調味料として、酢とのダブル効果が評判になっています。

ただ摂り過ぎは胃腸の荒れを招くので、1日5~10g程度に留め、上手に付き合ってください。

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フレイル予防には、まず食事で充分な「タンパク質」を!

フレイルという言葉をご存知ですか?フレイルは、2014年に日本老年医学会が提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」の日本語訳です。フレイルの前段階はプレフレイル(前虚弱)です。

要するに身体機能や認知機能が低下する状態で、健康と要介護の中間に位置しており、適切な治療や予防をすることで、要介護への進行を抑えることが出来ると言われています。

      

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              (東京都医師会HPより引用)

 

フレイルは筋力低下などの身体的要素の他に、精神的・心理的要素や社会的要素もありますが、中でも身体的要素の足腰の衰えを防ぐことが重要です。つまり、低栄養状態が続くことに因る体重減少から筋力が低下することを改善しなければなりません。

当然ながら主な対象は高齢者になりますが、昨今のコロナ禍においては、高齢者以外にも広がり兼ねません。 

栄養を充足させるためには、タンパク質をはじめとする五大栄養素食事摂取基準(2020年版)にしたがって、食事から摂取することが基本になります。

その際、筋肉を作る成分のタンパク質が不足しないように気をつけることがポイントです。

 

では具体的に、タンパク質はどの位をどんな食材から摂取すれば良いのでしょうか。

先ず1日の摂取量ですが、標準的(体格と活動量)な人の男性で60g女性で50gです。特にフレイル予防を念頭に置くと、それぞれもう少し多い摂取を心掛けるべきです。朝・昼・夕の三食で、それぞれ20g程度(以上)が目標になります。

次にタンパク食材ですが、いわゆる主食に対する主菜(おかず)に当たり、肉・魚・卵や大豆製品・乳製品に多く含まれています。

主な食材のタンパク質含有量を挙げます。

 ・牛・豚・鶏肉:60g→12g ・白身や青魚:60g→12g 

 ・卵1個→6g ・納豆40g→6g ・牛乳200mL→6g  

 ・米飯100g→2.5g ・食パン1枚→6g

筋肉をはじめとするタンパク質は日々壊されては作られているので、毎日充分に摂る必要があります。

 

フレイル予防のためには食事に気をつけるだけではなく、適度な運動、社会参加も重要な要因です。ストップフレイルで健康寿命を延ばしましょう。

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食べる丸薬「胡麻(ゴマ)」は栄養の宝庫!

ゴマは昔から不老長寿の秘薬とされ、「食べる丸薬」とも言われてきました。日本での生産は鹿児島県等でごく限られていて、国内流通の99%以上が輸入品ですが、市販品は多彩で手軽に入手できます。

本報では、ゴマの栄養から摂り方までを紹介(更新リブログ)します。

 

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先ず、ゴマの栄養と健康効果です。

主成分の約50%が脂質で、約20%ずつがタンパク質と炭水化物(糖質は微少)です。その他、食物繊維(約10%)、ビタミンB群・E、カルシウム・鉄などがあります。

・ゴマ特有の成分として、リグナン類(ゴマリグナンセサミン、セサモリン、セサモール、セサミノール等)が含まれています。

脂質の80%以上はリノール酸(必須脂肪酸)やオレイン酸の多い良質の不飽和脂肪酸ですが、欠点の酸化されやすさは、ゴマリグナンとビタミンEの強力な抗酸化作用で防がれています。この抗酸化作用が、老化防止やがん等生活習慣病の予防などのアンチエイジングに有効であるのは周知の事実です。

 

ゴマは白ゴマ黒ゴマ金ゴマ」の3種類に大別されます。品種が違うわけではなく、種皮の色つまり見た目の違いですので、栄養的にも大差はありません。但し、は淡泊な風味、は強い香りに独特の風味、はうま味やコクが強い、という特徴があり、料理によって向き・不向きがあります。

 

ゴマの健康効果を実感できる1日の摂取量は、大さじ1~2杯(10~20g)と言われています。摂り過ぎは脂質延いてはカロリー過多やアレルギーに繋がるので、毎日少量ずつ摂る事が重要です。

 

その際注意することがあります。炒りゴマのままで摂ると、小粒かつ固い皮でほとんど潰せず飲み込んでしまうので、消化吸収が期待できません。必ず擂り潰してから、あるいは擂りゴマを使ってください。摺ったゴマの方が香りも引き立ち、食欲も一層かき立てられるはずです。さらに、豊富な油分を利用してペースト状に加工すると練りゴマになるので、お勧めです。

 

風味の優れたゴマは料理にアクセントを与え、かつ健康にも繋がります。是非、活用してください。

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ゲノム編集で作られる食品(その2:具体的な取り組みとその表示)

前報で、ゲノム編集による品種改良の方法について紹介しましたが、本報では具体的な取り組みとその表示について言及します。

 

まず、主なゲノム編集食品の取り組みを図で一覧します。

今年のノーベル賞を受賞した「クリスパー・キャス9」という新手法が8年前に報告されて以来、開発は急速に進んでいるようです。

 

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                    (NHKクローズアップ現代」(2019.9.24)より引用)

 

これらのゲノム編集食品は、本来の内在遺伝子の切り取りや無効化で機能を停止する編集(前報での(a))に入る物になります。

例えば、マダイは、ミスタチオンという筋肉増加のブレーキ役の物質の遺伝子機能を欠損させているし、イネも籾の数や米粒の大きさに関係する遺伝子を書き換える改変なので、機能停止には当たらないが、(a)の範疇です。

 

これら(a)の範疇に入るゲノム編集食品は、自然に起こる突然変異を意図的に行っているだけなので、通常の品種改良と同程度のリスクであるとして、届け出の義務はなく(厚労省)、表示も課されません(消費者庁)。但し、厚労省は食品安全の情報を含めた届け出を推奨して受け付けを開始(昨年10月から)し、消費者には開示する方針です。

 

ただ、遺伝子改変の際に、誤った遺伝子の切断(オフターゲット)や対象外の遺伝子の変異などの可能性も指摘されており、消費者が選択できるような表示の義務づけを主張する声も根強い。

 

いずれにしても、今後の食糧難を念頭に置けば、天然の昆虫食も含めた新たな食糧(遺伝子組み換えやゲノム編集などによる)に頼らざるを得ない状況が来ることは確かであると思われます。

 

その時までに、一般消費者の不安が解消されていれば良いのですが・・・?

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ゲノム編集で作られる食品(その1:手法と従来の品種改良との相違)

つい先日発表された今年のノーベル化学賞は「ゲノム編集」の技術開発に与えられました。

 

ゲノムとは、遺伝子(gene)と染色体(chromosome)から合成された言葉で、個体のもつ遺伝情報のことです。既に遺伝子組み換えによる作物や食品が市場に出回っています。いずれも、「遺伝子を人為的に操作しているので、なんとなく不安!」という印象が強いのではないでしょうか。

そこで本報(2報あり)では、ゲノム編集の手法と従来から行われてきた品種改良(遺伝子組み換えも含む)との相違や、具体的な食品応用への取り組みを紹介することにより、少しでも不安の解消に寄与できればと思います。

 

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ゲノム編集とは、その個体がもつ遺伝子を鋏(酵素)で切り貼りすることにより性質を改変することです。遺伝子組み換えは、他の個体の遺伝子(外来遺伝子)を挿入して改変することですので、本来無かった新たなタンパク質が作られる(アレルゲンの可能性を秘める)点で異なります。従って、後者は日本では規制の対象で、審査に時間がかかり表示も原則義務化されています。

 

しかしゲノム編集でも、(a)元の遺伝子を削ったり少し書き換える(自然の突然変異に近い)ものから、(b)別の遺伝子と入れ替える(遺伝子組み換えに近い)ものまであるので、どう対応するのかが問われています。ちなみに、欧州司法裁判所は「全て遺伝子組み換えとして規制する」判断をし、米農務省は「規制を行うことはない」と表明しています。

 

従来からの育種は計画的な交配を行うもので、放射線や化学薬品で突然変異を誘導する技術が進んでいますが、開発には5~20年かかります。

これに対してゲノム編集は2~5年の開発期間で、効率よく品種改良できるメリットがあるわけです。しかも、既存の遺伝子組み換えでは狙い通りに改変するのが困難であったのが、ゲノム編集(今回のノーベル賞を受賞した手法)では、精度良くピンポイントでの改変ができるようになっています。

ちなみに受賞者の言を借りれば、「バラの棘を無くす改変で、従来なら甘い香りも失っていたが、この手法では棘だけを無くせる」とのことです。

 

次報では、このゲノム編集の手法による食品応用への取り組みと表示の問題を紹介します。

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