Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

老化の元凶「糖化」とは?(その1:定義とその影響)

糖質のテーマに関連した続編として、最近話題の「糖化」について紹介します。

まず糖化の説明です。糖化といえば、以前の化学では、デンプンなど高分子の糖類を低分子の麦芽糖ブドウ糖に分解することでしたが、近年では専ら、糖がタンパク質と結びつき加熱によって褐色に変化することを指します。そしてこうして出来た物質を終末糖化産物あるいは糖化最終生成物(Advanced Glycation Endproducts:略してAGEs)と称しています。解りやすく言えば、体が「焦げた」状態になることです(これに対して、体が酸化することは「錆びる」です)。

 

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元々食品ではメイラード反応として知られており、色付けや風味付けに有効利用されていました(例えば、発酵食品の味噌・醬油やパンのトースト等)。しかし体の中でこの反応が起きてAGEsが蓄積されると、老化を進めるという悪影響を及ぼすことが判ってきました。

我々の体の約20%をタンパク質が占めています。

その代表例は約1/3を占めているコラーゲンで、皮膚や軟骨、血管など全身に存在していますし、それを支えるエラスチンもタンパク質です。筋肉の収縮に関与しているタンパク質はアクチンとミオシンです。

これら全身に存在するタンパク質が糖化を起こしてAGEsを生成すれば、シワやシミ、筋力低下に繋がります。血管に溜まれば動脈硬化さらには心筋梗塞脳梗塞への進行、骨なら骨粗鬆症、目なら白内障等を引き起こすのです。アルツハイマー病の患者の脳には、健常者の数倍のAGEsが蓄積されていたという報告もあります。このようなAGEsの生成や蓄積による影響を、総合的に「糖化ストレス」と呼んでいます。いずれにしても老化に繋がる現象ですので、できるだけ抑えないといけません。

 

糖化は加齢(age)や喫煙・飲酒などの生活習慣によっても進行しますが、その最たる要因は食後高血糖(前報の<健康的な糖質摂取は?(その3)>で紹介済み)です。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

健康的な糖質摂取は?(その3:血糖値を上げない工夫)

血糖値とは血中に含まれるブドウ糖の濃度を指しますが、空腹中の正常範囲は70~110 mg/dLとされています。毎食後は当然の如く上昇しますし、途中でも糖分を飲食すれば上がりますが、その時の飲食量・食べる順番や食べ合わせによって、血糖値は変わってくるのです(後半で紹介します)。

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最近、食後に異常な高血糖値(140mg/dL以上、いわゆる「血糖値(グルコース)スパイク) を示す人が増えていると話題です。この血糖値スパイクで血糖値の乱高下が引き起こされると、動脈硬化が進行し、やがて突然死やがん・認知症までを招く深刻な事態に陥ります。

普段血糖値の調節はホルモンが担っています。つまり、血糖値が上がるとインスリンが分泌され、糖の細胞への取り込みを促して血中の糖量を正常レベルに戻します(この異常が糖尿病)。逆に高血糖の反動や糖質制限低血糖になると、グルカゴンやアドレナリンが分泌されて適正化されます。しかし加齢・体質や生活習慣の乱れ等で、これらホルモンによる血糖値の調節が鈍化してしまうのも事実です。

 

そこで最後に、血糖値スパイクを避ける血糖値の上下動が少ない対策法に言及します。

先ずは1)摂取する糖質の量と質を意識することです。主食であるご飯やパン・麺の量はもちろん、質としてGI(グリセミック・インデックス)値を参考に高GI食品(GI値70以上)は控えるべきでしょう(精白してない米やパン、ジュースよりも丸ごとが低GI)。2)朝食も含め3食きちんと食べる。1食でも抜くと、その後の食事後に血糖値スパイクを起こしやすくなる。3)食べる順番はベジファースト(野菜が最初)でカーボラスト(糖質が最後)を心掛ける。糖質の吸収が穏やかになる。4)ゆっくり良く噛んで食べる。一口で30回は咀嚼するようにしましょう。5)食後に軽い運動をする。食休みをするのではなく、直ぐに散歩など体を活発に動かすと効果的です。いずれにしても栄養バランス上、副食のタンパク質・脂質や食物繊維はしっかり摂ることを忘れないでください。

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健康的な糖質摂取は?(その2:糖質摂取の目標量)

前報で、1日の糖質摂取量が多い場合の300g(PFCエネルギー比60%)から極端に少ない場合の60g以下まで様々なケースを紹介しましたが、本報では健康を念頭に置いた糖質の摂取量に言及します。

 

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まず糖質摂取量の目標値を決める根拠を紹介します。

現在の日本人は1日当たり平均して270g程を摂取していますが、炭水化物(糖質)の摂取量が60.8%以上の群では死亡率が上昇するという大規模疫学調査結果もあり、もう少し控えても良いのかもしれません。

 

清野裕医師(関西電力病院総長、糖尿病の世界的権威)は170g必要で、120~130gが脳で消費され、30gは酸素の運び役である赤血球のエネルギー源になるとのことです。

またロカボでは、提唱者の山田悟医師の言を借りればリチャード・K・バーンスタイン医師(米国、糖質制限食の草分け的存在)が130gを採用しているのに基づくそうです。

糖質を制限し過ぎると、タンパク質を構成しているアミノ酸を糖に作り変える糖新生というシステムが働き始めますので、そのタンパク源である筋肉の量が減っていくことになります。また低糖質状態が続くとケトン体が合成されるようになり、脳がエネルギー源として利用しますが、ケトン体過剰(ケトン体ダイエットでのケトーシス状態)になると体が酸性に傾きケトアシドーシスの発症に繋がる危険もあるのです。

 

以上を総合的に判断すると、200g前後(±50g)が目標値という結論(各人の諸事情を考慮して緩くしました)に辿り着くことになるように思います。毎食ご飯一膳(食パンは2枚)を基本にして多少の増減を意識しても、副食(タンパク質・脂質・食物繊維)は控えないで食べるのが良いのではないでしょうか。

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次報の最終稿では、糖質摂取上の健康ポイントである血糖値の話題を提供します。

 

健康的な糖質摂取は?(その1:糖質摂取のあれこれ)

前報の「脂質より糖質の摂取量が問題!」の中で、糖質の摂取量がPFCエネルギー比で60%程度と多い場合から、ダイエット目的での厳しい糖質制限を行う場合(もちろんその中間のゆるい糖質制限の場合)まで、ケースバイケースがあることを紹介しましたが、本報ではもう少し個々の場合を具体的な情報として提供します。

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まず糖質がPFCエネルギー比で60%ということは、仮に平均的な成人の摂取カロリーを2000kcalとした場合には、糖質からは1200kcalです。糖質は4kcal/gのエネルギーなりますので300g(=1200÷4)摂取する必要があります。ご飯一膳(約150g)で糖質は約55gですので、四膳(食パン2枚で一膳分)に果物や飲料・調味の糖分を加えるとほぼ300gに達します。ちなみに缶コーヒーやコーラ等の清涼飲料には、多い製品で100mL当たり10g前後も含まれていますので、気をつけてください。

 

ゆるい糖質制限としては、最近話題の「ロカボがあります。ローカーボ(低炭水化物:極端な糖質抜き)ではなく適正な糖質摂取を提唱しており、一線を画しています。一食当たりの糖質量を20~40gにしてデザートを1日10gまで楽しんで、結果として1日の糖質量を70~130gに納めるという考え方です。糖質量をやや抑えた分、カロリーは余り気にせず脂質やタンパク質はしっかり摂って良いとのこと。ただ食べる順番は「カーボラスト」で、血糖値の上昇を抑えることに気を配るよう促しています。

 

さらにダイエット目的の厳しい糖質制限としては、1食あたりの糖質は10~20g以下、1日当たりでは30~60gに抑える「スーパー糖質制限もあり、3食ともご飯やパンなどの主食は食べないとのこと。このような極端な糖質制限は専門家の指導の下での短期間に留めるべきで、長期的なダイエット法としては勧められません。

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脂質より糖質の摂取量が問題!

当該ブログの「健康に良い油と悪い油」でも紹介しましたが、ここ数年で「良い油・脂肪はもっと摂るべき」が常識になってきました。

また続報の「コレステロールの新常識」では、コレステロールの摂取基準(目標値)が2015年版ではなくなったのは、食事由来のコレステロールの影響は小さいためであることを紹介しました。

さらに「脂質を制限するよりも摂った方が心筋梗塞や心臓病が少ない」、「炭水化物(糖質)の摂取量が多いほど死亡リスクが高まり、脂質の摂取が多いほど死亡リスクが低下する」という疫学試験等から「脂質摂取」を後押しする各種研究結果が蓄積されてきたことも貢献しています。

 

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このような脂質の見直しと引き換えに、新たに糖質の摂取がクローズアップされてきています。糖質は三大栄養素の中では第一のエネルギー源で、脳はブドウ糖を唯一のエネルギー源としていることからも、その重要性が伺われます。

従来から三大栄養素のエネルギー摂取比率(PFCエネルギー比)では糖質を60%程度とするのが理想とされてきました。一方、「ダイエットのためには第一に糖質を制限せよ(極端な場合は糖質主体の主食ゼロ)」が一般的に浸透しています。その目的は血糖値やインスリン分泌を抑えることにあります。高血糖や多量のインスリン分泌は肥満や糖尿病の引き金になるからです。

またゆるい糖質制限として「ロカボという食事療法が、生活習慣病や減量に効果的であると注目を集めています。いずれにしても血糖値の乱高下を引き起こすような食事が体に悪影響を及ぼすことは確かですので、避けないといけません。

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アボカド(ワニ梨):その栄養価の高さと健康効果

森のバターとも称される「アボカド(和名:鰐(ワニ)梨)」は、果物の中でも特異な存在と言えます。ギネスには「世界一栄養価の高い果物」として認定されるなど、ここ10年で消費を伸ばして、その健康効果も注目されていますので、紹介します。

 

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まずアボカドの含有成分(100g当たり:2015年版日本食品成分表)による主な栄養価です。

 ・エネルギー 187kcal(一般的な果物は40~60kcal)

 ・タンパク質 2.5g・脂質 18.7g・炭水化物 6.2g(内、食物繊維 5.3g) 

 ・ビタミン:E 3.6mg,B2 0.21mg,B6 0.32mg,C 15mg,葉酸 84μg,ビオチン 5.3μg

 ・ミネラル:カリウム 720mg,マグネシウム 33mg,鉄 0.7mg,リン 55mg

 

以上を踏まえた健康効果についてまとめてみます。

 ・脂質が多いが、不飽和脂肪酸が約80%を占め、コレステロールの低下作用あり

 ・食物繊維が豊富(水溶性:不溶性=1:2)で、便秘改善効果や整腸作用あり

 ・ビタミンEやCの抗酸化作用で、老化防止や美肌(ビタミンB2も)に効果あり

 ・豊富なカリウムで、余分なナトリウムの排出を促し、高血圧の予防効果あり

 ・葉酸が豊富(1日推奨量の約1/3含有)で、細胞増殖や造血に必須の作用あり

 ・抗酸化物質のグルタチオンも多く含まれ、特に肝臓を癒やし解毒作用あり

 

アボカドは皮が緑で未熟なまま収穫されますので、皮が黒みかがり、やや弾力を感じる柔らかさになれば食べ頃です。

食べ方(レシピ情報多数あり)としては、刺身で醬油や酢系の調味料につけるのもありですが、サラダやサンドウィッチに入れるのが一般的です。その他、スムージーの1種に加えたり、ディップにしても良いでしょうし、和え物や天ぷらの具にするのもお勧めです。

アボカドの小さめ1個の可食部は100g強で、エネルギーは約200kcalになります。1日に1個は摂り過ぎかもしれませんが、常用する果物に加えてみてはいかがでしょうか。

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寒い冬には、「あたたかい飲食物」がお勧めですが・・・?

これから一段と冷え込む冬の季節になると、「あたたかい飲食物が恋しい」と思うようになります。特に冷え性の方にとっては、救いの神の一つかもしれませんね。

そこで、昔から知られている「体を温める食材」を取り上げ、温める調理法の長所・短所についても紹介します。

 

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まず「体を温める食材」です。

薬膳の食性に五性というのがあり、体を温める作用があるのか否かで「熱 → 温 → 平 → 涼 → 寒」の5段階に分けられますが、熱と温のものを挙げます。

 ・熱:羊肉、酒類、生ニンニク、乾燥生姜、胡椒、山椒、唐辛子など

 ・温:牛肉、鰻、エビ、カボチャ、玉ネギ、長ネギ、小松菜、生姜、味噌、紅茶など

また漢方では、体を温めてくれるか否かで「陽性 →中性 → 陰性」に区別しています。敢えて、薬膳での熱と温に挙げなかった陽性の食材を取り上げます。

 ・陽性:赤身魚、卵、チーズ、根菜類(レンコン、ゴボウ、人参)、リンゴ、ブドウ、サクランボ、桃、みかん、ゴマ、ピーナッツ、黒豆、小豆、醬油、ハチミツなど

 

次にこれらの食材や調味料を使って、温かい料理を作る「調理法」です。

食材に対しての作用が優れているのは、順に「蒸す→煮る→炒める→焼く→揚げる→電子レンジ」になります。「蒸す」は蒸気によって満遍なく温められ、栄養も失われにくいのですが、「焼く・揚げる・電子レンジ」による調理法は、糖化によってAGEsという老化物質が生成しやすくなるのです(当該ブログの“老化の元凶「糖化」とは?”を参照)。特に電子レンジは短時間で高温加熱のため、水溶性ビタミンの流失が抑えられる利点はあるものの、脂質の劣化や糖化の進行が顕著なので、手軽さだけでの使用は考えものです。

 

いずれにしても熱い飲食物は、食道や胃の負担になり上咽頭がんの発症リスクも高くなりますので、熱すぎる物の頻繁な飲食は控えるべきでしょう。あくまでも「温かい」ですよ。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)