Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

今、見直されている優れた栄養食材「おから」(豆乳の絞りカス)

外出自粛の時節柄、毎日の食料調達もままならない状況ではないでしょうか。

そこで、安価で重宝な食材「おから」(保存が利くタイプあり)について、紹介します。

 

おから」は、大豆から豆腐を製造する際に出る豆乳の絞りカス(別名「卯の花」)です。その大半が産業廃棄物として処理されている現状ですが、カスとはいえども、大豆の栄養成分が多く残っている優れた食材として見直されています。

 

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先ず、生のおからの栄養価(100g当たり)を挙げます。

・エネルギー 111kcal・タンパク質 6.1g・脂質 3.6g・炭水化物 13.8g(食物繊維 11.5g)

・ミネラル:カリウム 350mg・カルシウム 81mg・リン 99mg・鉄 1.3mg

・ビタミン:E 0.4mg・K 8μg・B1 0.11mg・B2 0.03mg・B6 0.06mg・葉酸 14μg

乾燥おからは、生おからの水分を1/10程度にまで減らしているので、その分栄養成分がほぼ4倍に濃縮されています(例:エネルギー 421kcal・タンパク質 23.1g・食物繊維 43.6g)。

おからと言えば食物繊維が多い(その大半は不溶性)ので、便通の改善や老廃物の排出効果が期待でき、オリゴ糖も加わって整腸作用に繋がります。良質のタンパクが豊富で、ミネラルやビタミンも満遍なく含むので、食が細いあるいは偏食の方やダイエットにも効果的(特に乾燥タイプ)です。栄養成分以外には、エストロゲン様の作用を有するイソフラボンも残っています(約10mg/100g)。

 

おからのタイプには上記の「生」と「乾燥」の他に、最近話題の「パウダー」があります。

生タイプは絞りたてのもので、大豆の風味はありますが、水分が多いので日持ちはしません。乾燥タイプは生おからの水分を抜いたもので、水を加えて戻すと生おからとして使えますし、そのままで嵩増しにもなります。パウダータイプは、乾燥おからの粒子をより細かくし大きさも揃っていますので、小麦粉の代用品にしたり飲み物に加えたりもできます。

飲み物やヨーグルトからハンバーグや菓子まで(具体的には各種レシピを参照)と幅広い利用が可能ですので、是非食生活に採り入れてみてください。

 

なお最後に追加情報ですが、「大豆を丸ごと使ったおからのでない豆腐」があります。乾燥大豆を超微粉砕した粉を使うのですが、栄養価が高く味も濃厚で楽しめるとのこと。普及が待たれます。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

体調を司る体内時計(その2:食事が及ぼす影響)

前報で、体内時計(それを調節しているホルモン)が光の影響を受けることを明らかにしました。

朝、太陽光を浴びるのが理想ですが、曇りの日でも窓際で30分位は浴びたいですし、昼間も夕日も浴びるのが良いのです。しかし実際にこれを実行するのは、なかなか難しいですね。そこで「食事」も重要な影響を及ぼしていることを、改めて紹介します。

 

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朝日が体内時計と生活時計のズレ(数十分前後)をリセットするのですが、もう一つ「朝食」がその役割を担っていますので、しっかり摂るようにしないといけません。朝食とはブレイクファスト、つまり絶食を破る食事ですから、人によっては朝とは限りませんが、ダイエットや時間がないなどで抜くと、逆に体内時計を狂わして太ると言われています。

 

一日3食の割合は、「朝・昼・夕をカロリー比で3:3:4にするのが適切」と時間栄養学で判明しました。夕食が特に高カロリーになるのは避け、朝食との絶食時間は12時間前後が理想です。

 

また食べ物によって、体内時計を動かすものと動かさないものがありますが、朝食には動かすものが良く、夕食は動かさないものが良いのです。

具体的には、前者はグリセミックインデックス(GI)値の高いもの(白米・パン・ジャガイモ・砂糖など)に、後者では低いものになります。要するにインスリンの分泌を促すものが、体内時計を動かしてリセットしやすいことになり、朝食に良いのです。

コーヒーなどカフェインの多い飲み物は、朝はOKで夜はNGです。ミルクやヨーグルトは夜に摂るのがベターで、骨粗鬆症予防にも繋がります。魚油が体内時計を大きく動かすことも明らかになり、リセット作用や時差ぼけ解消に効果的です。

 

体内時計に関する研究は、栄養学だけでなく、医学・薬学・運動学に至るまで、急速に進んでいますので注目してください。つい最近では、体内時計の乱れが免疫の老化につながる仕組みが解明された(京都府立医科大:八木田教授)、とする発表もありました。

(この情報の一部は、古谷彰子:時間栄養学が明らかにした「食べ方」の法則(ディスカヴァ・トゥエンティワン,2014.8)を参考にしました。また、本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

体調を司る体内時計(その1:定義とその役割)

新年度が始まりましたが、何らかの環境が変わることで、体調が崩れることを懸念している人も多いはずで花井でしょうか。そこで、当該ブログでも配信済みの「体調を司る体内時計」の話題ですが、少し加筆修正をして更新リブログします。

 

一昨年のノーベル医学生理学賞は本庶 佑京大特別教授で話題になりましたが、三年前の同賞を受賞したのは「体内時計のメカニズムの発見」でしたが、この中身のことを知っていましたか?

 

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体内時計とは、私たちの体の中にある「一日のリズム(概日リズムまたはサーカディアンリズムとも言う)」、すなわち朝になると血圧や心拍数が上がり始めて活動状態になり、夕方には体温が上がって夜には自然な眠りに導かれるなどのサイクルを刻むメカニズムを司っているものです。その1日は24.5時間の周期です。地球上の時計が刻む生活時間の24時間とは少しズレています。このズレをうまく調節しないで生活していると、体調不良や様々な病気の原因になると言われています。

 

脳の視交叉上核に「親時計」があり、胃・肝臓・血管・皮膚など様々な末梢組織に「子時計」があることもわかっています。

親時計の周期は24.5時間ですが、子時計のそれは臓器や細胞によってまちまちなのです。したがって、バラバラで動いている身体の組織に対して、1日のスタートを「よ-いドン」と合わせてやる必要があり、それが親時計の重要な役割になっています。

 

この体内時計を調節しているのがメラトニンというホルモンで、その生産量は光の明暗に左右されます。朝日を浴びると体内時計がリセット(「よーいドン」)され、メラトニンの分泌が止まります。その後14~16時間経過(朝7時に起床すると夜の9~11時頃)すると、メラトニンが分泌され始めて夜にかけて徐々に高まっていき、休息状態から眠気を感じるようになります。すなわち、メラトニンの上昇によって深部体温が下がり、良質な睡眠に導かれるわけです。

 

従って、朝の光は十分に浴び、夜には強い照明を避ける必要があります。夜遅くに眼前でパソコンやスマホブルーライトを浴びるのが良くないと言われているのは、この理由からです。 

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

次報では、体内時計に影響を及ぼす「食事」について、時間栄養学の成果を紹介します。

コーヒーは健康に良い?悪い?(その2:有効成分と飲む限度)

コーヒーに含まれている2大成分と言えば、「カフェインとポリフェノール」です。どちらにも共通して抗炎症や抗酸化という良い作用があります。

 

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しかしカフェインは諸刃の剣で、よく知られている覚醒作用の延長上に集中力向上や疲労感緩和がありますが、途切れるとその反動が出ます。従ってカフェインの摂り過ぎや中毒にも注意が必要で、1日摂取量の上限は健康な成人で400mgと言われています。コーヒー100mLには約60mg含まれていますので、1日3~4杯が限度ということになります。前報での疫学調査の結果では、多く飲むほど効果的という印象を受けますが、最新の国立がん研究センターのコーヒー摂取と全死亡リスクとの関連イギリスの医学誌でも過去約200の研究結果を分析したところ、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡や発症リスクが最も低くかった、とのことです。

 

一方のポリフェノールは、植物が紫外線の酸化ダメージから身を守るために作った成分なので、抗酸化作用が特徴です。コーヒー豆にはクロロゲン酸が含まれており、その働きによって体に良い各種の効果(血液サラサラや血圧・血糖値の低下等を通した各種発症リスク低減)をもたらしていると言えます。

 

コーヒーは生豆を焙煎して飲みますが、その焙煎度によって成分量に変化が生じます。カフェインはほぼ変化なしですが、クロロゲン酸は深く煎るにつれて減少し、代わりにニコチン酸やNMP(抗血栓やリラックス効果あり)が増えてきます。TPOに応じて、浅煎り、深煎り、あるいは深浅混ぜ(中煎り)を飲み分けるのもいいのではないでしょうか。但し市販のコーヒー飲料には大量の糖分が入っている製品もありますので、気を付けてください。カフェインが気になる人には、デカフェ(カフェインを除いたコーヒー)もお薦めです。またコーヒーが苦手な人は無理に飲まなくても、緑茶で同様の効果が確認されています。

(この情報の一部は、日経Goodayや岡希太郎博士のWEB記事を参考にしました。また、本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

 

 

 

 

コーヒーは健康に良い?悪い?(その1:コーヒー悪者説からの変遷)

 

コーヒーは日本のみならず世界中で愛されている飲み物ですが、「健康に良いのか悪いのか」、「1日に何杯までOKなのか」の論争はつきません。

そこで本報では、最近の研究成果に基づいたコーヒーにまつわる情報を提供します。

 

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そもそもコーヒーはタバコや酒と同様の嗜好品とされ、「何となく体に悪そうな飲み物」という印象を持たれていました。それを後押ししたのが、1980年代前半の北欧での「コーヒーが心筋梗塞を引き起こす」という報告です。当時は挽いたコーヒー豆を鍋で煮出していたので、精油成分も摂取したためと言われています。要するに、コーヒー豆を高温で抽出してそのまま油分ごと飲むのが良くないので、今日でもフレンチプレスやエスプレッソは飲む頻度を控えた方が良さそうです。フィルターなどでドリップすれば油分は除かれますので、健康を意識するならお薦めの方法になります。

 

21世紀に入った頃から「コーヒーは健康に良い」という研究が出始めました。中でも2002年ロブ・M・ヴァンダム(オランダ)らの「コーヒーを1日7杯以上摂取する人は、2型糖尿病の発症リスクが1日2杯以下の人の約1/2になる」という報告や、その後の追跡調査での「コーヒーを1日6杯まで摂取した人でも、がんや心血管疾患などによる死亡リスクには関係しない」という結論が、コーヒー悪者説を払拭したと言えるのではないでしょうか。

 

日本でも2005年に国立がん研究センターが、「コーヒーをほぼ毎日飲む人では肝臓がんの発生率が約半分になり、1日5杯以上飲む人は約1/4まで下がる」ことを発表しました。

その後もコーヒーに関する疫学調査が進みました。特に大規模前向きコホート研究という信頼性の高い研究で、コーヒーの飲用でリスクの下がる疾患が、上記以外にも脳卒中パーキンソン病うつ病・メタボリック症候群など多方面に及ぶことも明らかになりました。

 

こうしてコーヒーは健康な飲み物として定着したと言えそうですが、カフェインの影響などにも注意が必要ですので、次報ではコーヒーの成分的な話に言及します。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。) 

糖化と酸化の健康への悪影響の予防は?

最新の前2報で、老化の元凶が「糖化」であり、終末糖化産物(AGEs)が体内に留まるのを抑える対策法について紹介しましたが、一方、体の「酸化」がアンチエイジング(抗加齢)の敵であることは、糖化が注目される以前から周知のことでした。糖化が「焦げる」に例えられるのに対して、酸化は「錆びる」に例えられ、ともに有害作用を及ぼす元凶です。

 

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本報では、酸化とそれに伴う悪影響(酸化ストレス)について紹介し、その予防に関する情報を提供します。

 

酸化の源は酸素ですが、その酸化の過程でより酸化能力の高い「活性酸素が発生します。この活性酸素は健康にとって諸刃の剣で、有益にも働きますが、老化を始めがん・動脈硬化・糖尿病・アルツハイマー病など数多くの病気の発症や悪化の要因になることが多いのです。従って本来、後者の酸化ストレスに対する防御系(抗酸化能)が備わっていて、活性酸素を消去するのですが、加齢や偏った食事・喫煙等の不健康な生活習慣によって、その働きが衰えていきます。

 

そこでこの抗酸化能を、食品に含まれている成分を摂取することで補える「抗酸化食品」が注目を浴びることになりました。そのきっかけになったと言えるのが「フレンチパラドックス」で、世界有数の動物性脂肪の消費国であるフランスには心筋梗塞になる人が少ない、という逆説が、多飲する赤ワイン(ブドウの皮に抗酸化成分であるポリフェノールが多い)の予防効果に因る、とされた話題です。日本で言えば、ポリフェノールの一種であるカテキンの多い緑茶が相当し、製品化が進みました。なお、抗酸化食品の詳細や具体例については、当該ブログの「機能が注目の抗酸化食品(その1~2)」を参照してください。

 

いずれにしても糖化と酸化は関連があり、両者が相まってストレスがより高まると、老化や発症の危険度も数倍増すことになりますので、注力が必要です。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

老化の元凶「糖化」とは?(その2:食品中のAGEs)

前報で、体の中での糖化による終末糖化産物(AGEs)の生成と蓄積が及ぼす影響(糖化ストレス)について記し、特に食後高血糖が最大の要因であることを紹介しました。この食後高血糖を予防する対策法については、前報<健康的な糖質摂取は?(その3:血糖値を上げない工夫)>で提供しましたので、参照してください。

 

本報では、AGEsが体内で作られる場合の他に外から取り込まれる、すなわち摂った飲食物に含まれている場合もありますので、この気になるケースについて紹介します。

 

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前報でも糖化が焦げた状態であり、食品例も少し示しましたので、ここでは調理をする際の「油で揚げたり、焼く」ことによる焦げ目についてです。例を鶏肉100g中のAGEs量(ku)で示します:蒸し焼き→769,水炊き→957,焼く(フライパン)→4938,バーベキュー→8802,唐揚げ→9732。このように蒸したり、水煮の場合は1000以下ですが、焼いたり、揚げた場合には5~10倍のAGEs量に跳ね上がることが判ります。ベーコンはさらに多量で90000強です。ただしこれらのAGEsが全て体内に取り込まれるわけではなく、10%程が体内に溜まると言われています。

 

なお抗糖化食材の研究も進み、身近なものではモロヘイヤやサニーレタスの葉物やドクダミ茶、ハーブのローズマリー等が有効で、食品成分的には、フラボノイドやクエン酸、ビタミンではB1やB6が有効です。さらに竹内(金沢医大)らの研究に拠りますと、AGEsの主要7種の中でも善玉と悪玉があるらしい(コーヒーのAGEsは善玉?)です。

 

これらのことを総合しますと、食品による糖化の影響は、一概に色の濃淡だけでは判断出来ませんし体内に溜まる量も少ないので、「揚げ物、焼き物」は控えめにする程度のことを頭に入れておく、を結論として良いのではないでしょうか。

(この情報の一部は、AGE測定推進協会のHP<http://www.age-sokutei.jp/>を参照しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)