Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

「夏バテ」の原因と梅雨明けからやるべき解消法(主に食事)

ジメジメした梅雨が明けると猛暑の夏がやってきます。昼間の体へのダメージと夜間の睡眠もままならず、体がダルかったり食欲が落ちたりするのが「夏バテ」です。

夏バテとは、夏特有の高温多湿の環境が原因で、体が正常に機能しなくなって起こる体調不良のことを指します。夏バテの主な要因としては、水分とビタミン・ミネラルの不足が挙げられます。暑いときには体温が上昇しますが、汗をかくことで体温を下げようとします。汗は水分だけでなくビタミンやミネラルも排出するので、脱水プラス微量栄養素不足に陥るわけです。また室内外の温度差を繰り返し感じることで、体温調節を司る自律神経(正反対の働きをする交感神経と副交感神経)そのもののバランスが崩れてしまいます。

 

そこで本報では、夏バテの予防・対策法に関する情報を、主に「食」の面から提供します。

       

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夏バテの主な症状としては、体がだるい・食欲がない・疲れがとれない・眠れない、などが浮かびます。

これらの症状は梅雨の頃、多湿により体が余分な水分を溜め込んで胃腸機能が低下する事から始まり、夏の暑さにより一層顕著になります。

 

規則正しい生活と運動習慣が心地よい眠りに導くことは言うまでもありませんが、何をいつどのように摂取するのかという食事の大切さを今一度肝に銘じるべきです。

 ・適切な水分とミネラルの補給:脱水対策として、大量の水のみの補給は水中毒低ナトリウム症を引き起こし危険です。状況に応じて塩分さらには糖分の補給(経口補水液やスポーツドリンクなど)をしてください。

 ・良質なタンパク質を含む栄養バランスの採れた食事:肉・魚・大豆・卵などを主菜に、新鮮な野菜・果物・海苔で、特に失いやすい水溶性ビタミンのB群とCを補給しましょう。

 ・香辛料や酸味(料)で食欲増進:唐辛子・生姜・胡椒・ワサビなどの香辛料は体も温めますし、クエン酸(梅干し・レモン等柑橘系)は疲労回復やミネラルの吸収にも役立ちます。

 ・抗酸化食品の摂取:強い紫外線を浴びて増加した活性酸素による全身の機能低下を予防・回復のため、特に色の濃い夏野菜(トマト・ナス・ピーマン等)を皮ごと食べましょう。

 

夏バテは、主に食事を見直し(量より質、冷たい物を控える)、軽い運動と良い睡眠を加えることで解消できるはずです。自分にとって効果的と思われる方法を実践してみてください。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

夏を代表する食べ物「スイカ(西瓜)」の健康効果

夏の食べ物として思い描くのは、まず「イカ(西瓜)」ではないでしょうか。西瓜と書くのは中国の西方から伝来した瓜からで、スイカと読むのは西瓜の唐音が訛ったとのこと。

 

冷えたスイカはみずみずしくて美味しく、当に夏にぴったりです。夏前から果物コーナーでの主役になっていて、丸ごとはもちろん、1/4~1/8や一口大にカットした物まで、様々なタイプが並んでいます。

 

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ところで、スイカは果物でしょうか?

農水省では果実的野菜として野菜の扱いですが、文科省管轄の日本食品標準成分表では「果実類」に分類されていますので、消費者にとっては果物です。

 

イカ主な栄養・健康成分(赤肉種:可食部100g当たり)とその効果を挙げます。

 ・水分 90g+炭水化物 9.5g(内、食物繊維 0.3g):水分量が多くて糖質もあり、塩を少し加えると天然のスポーツ飲料になる

 ・カリウム 120mg:ナトリウムを排出して血圧低下やむくみ改善に効く 

 ・β-カロテン 0.83mg:体内でビタミンAに変換され、自身の抗酸化作用もあり

 ・リコピン:抗酸化作用でアンチエイジングに効果的

 ・シトルリン:スイカから発見された成分でアミノ酸の1種。腎臓の働きを助けて老廃物を排出する作用(利尿作用)があり、血流改善効果や肌の保湿効果も期待できる

 

果肉と皮の間の白い部分には、シトルリンが果肉の2倍含まれていることが判っています。捨てるのではなく、漬物や千切り(サラダやスープに)、あるいはスムージーの材料として利用することを勧めます。

 

夏が旬のスイカは、食欲が落ちるこの時期に手軽に食べられ、熱中症予防にも適した優れものです。ただし、体を冷やす性質があることに注意しながら、スイカの力を取り入れて、酷暑を乗り切りましょう。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

今、見直されている「漬物」の健康効果

和食の基本として、昔から「一汁三菜」と言われます。主食であるご飯に味噌汁、主菜(おかず)に副菜二品という組み合わせですが、そこに必ず香の物(漬物)が添えられていました。漬物は日本人には伝統的な食べ物ですが脇役でしかなく、近年では塩分過多の心配から敬遠されているようです。

本報では、そんな状況にある漬物のメリットを改めて紹介したいと思います。

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漬物の材料と言えば主に野菜です。野菜の1日摂取量として350gが推奨されているが、成人男女の平均摂取量では60g程不足しています。生野菜のサラダは手軽ですが、そう多くは摂れません。

そこで、漬物がクローズアップされるのです。漬物にすると、1)幅広い味付けができ保存性も増して食べやすくなる、2)カサが減り非加熱で栄養効率が良い、3)物により発酵した乳酸菌で腸活に効く、4)口直しや箸休めで食が進む、等のメリットが出てきます

 

代表的な漬物とその特徴を挙げます。

浅漬け:その名の通り、最も時間も手間もかからず簡単に作れる漬物。市販の浅漬けの素を利用しても良いですし、数種の野菜と塩昆布があれば混ぜるだけで作ることもできます。新鮮な旬の野菜が、栄養 (食物繊維、ビタミン類、ミネラルなど) を逃がさず塩分控えめで、かつ美味しく摂れます。

糠(ぬか)漬け:米ぬかを乳酸菌で発酵させたぬか床に、ほぼ一晩野菜を漬けたもの。ぬかのビタミンB1が漬物にしみ込み豊富で、植物性乳酸菌による腸活も期待できます。

麹漬け:米麹に砂糖や塩を混ぜた床に、野菜などを漬けたもの。発酵した麹の風味や旨味が材料にしみ込み、自然な甘味が特徴と言えます。大根のべったら漬けが有名です。

 

最後に、塩分の問題に触れないわけにはいきません。当該ブログ(健康に良い塩分摂取とは?)で、適塩は6g前後/日であると紹介しました。高塩の代表は梅干しで、20%になるものもあります。浅漬け等の低塩ものでは、2%前後です。近年、梅干しもそうですが、減塩や低塩を謳った製品も多く見受けられます(保存性は低下)。必ず、栄養成分表示等で塩分量を確認してから摂ってください。

 

漬物は食欲を昂進し有効成分も摂れる優れものです。是非、食卓に添えて健康の手助けにしましょう。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

認知症に有効とされる「マインド食」とは?

マインド(MIND)食とは、地中海食穀物や乳製品、オリーブオイル、野菜・果物が中心で心疾患予防に有効)とダッシュ(DUSH)食(塩分と炭水化物を控えて塩分排出作用のあるミネラルと食物繊維を摂ることで高血圧予防に有効)を組み合わせた食事法のことを言います。

2015年に認知症の国際誌に、MIND食を実践することでアルツハイマー病のリスクが大幅に減少した、とのアメリカからの報告が載り注目されましたので、改めて紹介します。

 

MIND食は、次の図に示す「推奨される10食材」と「避けるべき5食材」から成っています。

                    

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この15食材の内、平均5.6食材しか実行していない群に比べて、平均9.6食材を実行(厳密に実行)した群は53%、平均7.5食材(ゆるやかに実行)の群でも35%それぞれ発症率が低かったことが確認されました。

 

その中身を具体的に説明します。

飽和脂肪酸(赤身の肉やバター、チーズ等の動物性脂肪)や甘い物を控え、オメガ3等の不飽和脂肪酸(ナッツ類オやオリーブオイル、魚)、ポリフェノール等の抗酸化物質(ベリー類やワイン)カロテノイドや食物繊維(緑黄色野菜等)を推奨する食事法ということです。

特に、油はオリーブオイルを優先的に使い、ベリー類を摂ることを意識しましょう。

避けるべき食材の具体的な目標頻度は、次のようになっています。

・赤身の肉 → 週4回以下 ・バター → なるべく少なく ・チーズ → 週1回以下

・お菓子 → 週5回以下 ・ファストフード → 週1回以下

更に日本人としてもう一つ付け加えるならば、塩です。1日6g未満の減塩がベターでしょう。

 

こう見てくると、マインド食は認知症予防食の域を超える「健康食」と位置づけて良いはずです。

マインド食の実践に際して、15食材の内10食材を守ること(上記データの厳密に実行に当たる)は、日本人の一般的な食事に照らし合わせても実行可能でしょうし、7,8食材のゆるやかな実行から始めてもいいのです。なお、充分な睡眠と適度な運動も忘れないようにしてください。

(この情報の一部と図は、日経Gooday編集部:認知症と食事―認知症リスクを下げる食事のポイント―(日経Gooday,2020.1.6)から引用しました。また、本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

 

発酵食品である納豆の健康効果は?(その2:新製品、食べ方)

「安い・美味しい・ヘルシー」と三拍子揃った納豆ですが、最近は食わず嫌いの関西でも「体に良いから食べる」という人が増えているとのこと。その消費額も近年の減少傾向を脱して、ここ数年は年々増加の一途だそうです。

 

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当然、納豆は新製品の開発も盛んで、進化を遂げています。

まずは、あの独特の匂いが気になる人が多いことから、匂いの原因物質を作らない納豆菌を探索して匂わない」納豆が発売されました。後は容器に工夫を凝らして、食べる際に手が汚れない」構造の製品も出ています。また、主に海外への市場開拓を狙った粘らない」納豆は、糸を引いてこその納豆を逆手にとった製品で、香りが引き立ち、調理もし易いメリットがあるそうです。ごく最近になって、免疫力が従来の1.5倍高い納豆菌「S-903」による新製品も出ました。なお、カプセルに入った「そのもの納豆」というサプリまであります。

 

最後に、食べ方について紹介します。

納豆のパックには賞味期限が表示されていますが、なるべくギリギリに近いほど旨味が増し食べ頃です。また冷蔵保存しますが、30分程かけて常温に戻してから食べるのがベターです。タレはカラシが一般的ですが、ワサビ(イソチオシアネートの作用)の方が健康に繋がります。朝か夜かと言われれば夜の方がお薦めです(睡眠中にナットウキナーゼが作用)。

食べる際には50回程かき混ぜて粘りを充分に出してください(ポリグルタミン酸の作用)。また、熱いご飯に混ぜる等加熱すると酵素の作用が弱まりますし、生の卵白も控えた方が良い(加熱した半熟卵や温泉卵なら大丈夫)でしょう。

今後はご飯にかける以外の用途として、特に夕食のおかずへの展開も期待されています(納豆オムレツなど、「おかず納豆」や「サラダ納豆」の新製品もあり)。1日に食べる量は100g程度までなら毎食3回食べても大丈夫(納豆以外にも大豆製品を多く摂っている人は、少し控える)ですので、味や食べ方のバリエーションを工夫して、納豆の健康効果を体現してみてはいかがでしょうか。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

発酵食品である納豆の健康効果は?(その1:含有成分と健康効果)

7月10日は「納豆の日」です。7(なっ)と10(とう)の語呂合わせで、関西での消費拡大を目的に制定されたとか。

 

大豆製品の中でも優等生なのが発酵食品の「納豆」で、ご飯のお供として食卓の定番になっていますが、意外と知らないことが多いのではないでしょうか。

そこで本報(2報)では、含有成分や食べ方などから、納豆の健康効果について言及します。

                                    

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納豆と言えば、厳密には納豆菌による「糸引き納豆」と麹菌による「塩辛納豆」(大徳寺納豆や浜納豆等)がありますが、一般的に納豆と言えば前者を指します。

 

まず糸引き納豆の含有成分(100g当たり)からの健康効果を挙げます、

 ・良質のタンパク質を16g強含み、高栄養

 ・抗菌ペプチドがヒトのがん細胞を死滅させたので、抗がん作用の期待

 ・ビタミンK(0.6mg)による骨形成の促進で、骨粗鬆症を予防

 ・水溶性食物繊維(2g強)やビタミンB2、レシチンにより血糖値上昇を抑制

 ・オリゴ糖や食物繊維、納豆菌による腸内環境の改善

 ・ポリアミンによる動脈硬化や炎症の抑制で、老化防止

 ・ジピコリン酸による抗菌作用で、病原性大腸菌O-157の感染を予防

 ・ナットウキナーゼ(酵素)による血栓溶解作用で、脳梗塞心筋梗塞を予防

さらに大豆イソフラボンの健康効果は良く知られています(当該ブログの「大豆の健康パワー(その2)」でも紹介)が、糖結合の有無によりグリコシド型とアグリコン型があります。その多くは前者なのですが、後者の方が吸収される時間が速くてその率も高いのです。納豆は比較的後者が多い方なのですが、その効果を期待するには腸内細菌の助け(個人差あり)が必要になります。

また、納豆をよく食べる食習慣をもつ人は、そうでない人に比して、脳卒中で亡くなるリスクが約3割低いとの報告(岐阜県高山市在住の約3万人の食生活調査)もあります。

 

いずれにしても、近年の様々な研究から新たな健康効果が見出されてきており、その効果は多岐にわたっていて、「奇跡の食品」とまで言われるほどです。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

 

キウイフルーツは手頃で栄養価の高い貴重な果物

キウイフルーツは年中店頭に並んでいますが、4月~12月頃は輸入物で、12月~4月頃は国産物と住み分けられています。輸入物の主な産地はニュージーランドで、元々は中国原産の「支那猿梨」という果物ですが、ニュージーランドに持ち込まれて国鳥のキーウィの姿に似ているところから、現在の名前になったそうです。グリーン種が一般的ですが、ゴールド種もあり夏場に多く出回ります。

そんなキウイフルーツは、手頃な価格で食べやすく栄養価の高い果物ですので、以前に配信した内容を一部バージョンアップして更新リブログします。

 

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消費量の多く安価なグリーンキウイの栄養(可食部100g当たり)や特徴的な成分を挙げます。

・炭水化物として13.5gの表示になっていますが、その内糖質は10gで食物繊維が2.5gです。

・ビタミンではC(69mg)やE(1.3mg)、葉酸(36μg)が豊富で、ミネラルではカリウム(290mg)が多く含まれています。

・栄養成分以外では、ポリフェノール有機酸が含まれ、アクチニジンというタンパク質分解酵素も存在しています。

ちなみに、キウイは果物中で栄養素充足率がトップで、グリーン種よりもゴールド種の方が上です。

これらの含有成分から認められる効能・効果は次のようになります。

・食物繊維の中では不溶性のものが多いので、腸内環境を整え便秘改善に効きます。

・ビタミンCとE及びポリフェノールが抗酸化作用を発揮し、美肌や老化防止に効果があります。

葉酸(ビタミンB群)は細胞の分化に関わっており、胎児の成長に欠かせず貧血予防にも有効です。

カリウムは取り過ぎたナトリウムを排出するので、高血圧の予防に繋がります。

・アクチニジンはタンパク質を分解して消化を助け、主菜のタンパク質の吸収を促します。

 

軽く握って軟らかさを感じれば食べ頃です。グリーン種(ヘイワードなど)は酸味が強く、ゴールド種(ゼスプリゴールドなど)の方が甘味を感じやすい。また、前者は食物繊維が多くて後者はビタミンCが多い、と言う特徴の違いがあります。これら栄養価を活かすためには「生で食べる」のがお勧めです。ヨーグルトと混ぜたり、シリアルやアイスクリームのトッピング、ジュースやスムージーにしたりとアレンジもできますので、是非、食生活に採り入れるようにしてください。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)