Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

原料が牛乳か豆乳かで「ヨーグルト」の効能はどう違う?

ヨーグルトがおなか(腸)に良いことはなんとなくご存知かもしれませんし、当該ブログでも既に配信(2019.4.21)しましたが、それは牛乳からのヨーグルトのことです。

本報では、新たに豆乳からのヨーグルトを対象に、その効能を牛乳のもの(一部は配信済みのブログから再掲)と比較してみようと思います。

 

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ヨーグルトは乳酸発酵された食品ですが、製品により中に含まれている乳酸菌には違いがあります。

端的には、牛乳のものには動物性乳酸菌が、豆乳のものは漬物などにも居る植物性乳酸菌が生息しているのです。前者の菌が胃酸で死滅するのに対して、後者の菌は生きて腸まで届く強い菌で、腸内フローラの改善(善玉菌が割合が増加*)をより有効にし、免疫力アップ(風邪などの感染症罹患率が低下*)の効能にも繫がります。ただし前者の菌も、様々な物質を分泌して腸内フローラの改善に寄与すると言われています。

 

そもそも腸内フローラとは、腸内に棲んでいる様々な細菌(数百種類、100兆~1000兆個)の生態系をお花畑に例えたもので、人それぞれで異なっています。その構成は善玉菌・悪玉菌・日和見(前2者の優勢な方に同調する菌)がほぼ2:1:7の割合であるのが理想的です。しかし食事をはじめ様々な生活要因によって日々その菌叢は変化しています。下手をすれば悪玉菌が増えて、体全体の約7割が集中している免疫細胞に悪影響を与えかねません。

 

次に、牛乳と豆乳由来のヨーグルトに含まれる成分(100g当たり)の特徴を比較します。

牛乳(カッコ内は豆乳):エネルギー 62(49)kcal・糖質 3.9g(0.3g)・脂質 3.0g(2.8g)・タンパク質 3.6g(3.5g)・カルシウム 120mg(15mg)・コレステロール 12mg(0mg)

 → 脂質とタンパク質の含量に差はないが、豆乳の方が低糖質のためやや低エネルギーで、コレステロールはゼロ

他に、豆乳の方は大豆イソフラボンが20~30mg含まれており、発酵により吸収量が増して、血圧の上昇抑制や血中コレステロールの抑制、乳がん予防などの効能もアップする。

 

こうして比較すると、牛乳ヨーグルトには良質のタンパク質やカルシウムが豊富ですが、豆乳の方には牛乳にはない多くのメリットも見てとれますので、それぞれの特徴を念頭に、毎日100~150gをできれば夕食後の10時頃までに食べ続け(菌種により合う合わないがあるので、合わなければ製品を替える)て、その効能を実感してみてください。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。ただし、*印の情報はmarusanの豆乳グルトのネット記事を参考にしました。)            

 

今、手軽に始めて続けられる「糠漬け」がブーム!

 

当該ブログで「漬物」(2020.7.31配信)については提供済みなのですが、その記事の中で漬物の種類として「糠漬け」の特徴を数行で紹介しました。本報では、ブームが来ているとも言われているので、本格的に情報提供をしようと思います。

 

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そもそも糠漬けとは、米糠を乳酸発酵させて作った糠床に野菜等を漬け込んで作るものです。

玄米の栄養成分や乳酸発酵で増える植物性乳酸菌の効用が期待できる優れものですが、その歴史は江戸時代からで、漬物の中では比較的浅い(日本最古の漬物は奈良時代)とのことです。

 

まず、糠漬けに豊富な栄養・健康成分とその働きを挙げます。

・ビタミンB群:特にB1は元の野菜の約10倍に増え、B2と共にエネルギー代謝を補助

・ビタミンE:抗酸化作用で脂質の酸化を防止

・γ-オリザノール、フェルラ酸:ポリフェノールの1種で抗酸化作用による老化防止

イノシトールフィチン酸:同時摂取で吸収されやすく、ある種の生活習慣病を予防

さらに有効含有物として植物性乳酸菌が多数存在しています。

この菌は、乳製品などに含まれる動物性乳酸菌と比べて腸で生きる力が数倍強く、悪玉菌の繁殖を抑えて腸内フローラを改善し、免疫力アップや便秘・肌荒れにも効いていると言われています。

 

ただ漬物の宿命として、塩分を多く含む(100g当たり)というデメリットを押さえておく必要があります:キュウリ→ 5.3g・大根→ 3.8g・ナス→ 2.5g・カブ(根)→ 2.2g

例えば、大根3切れでは0.9gの塩分になるので、塩分過多を防ぐには、量を控えることはもちろん、多少旨さを犠牲にする塩抜きや漬け時間の短縮などの工夫をしてください。塩出し食(当該ブログ:2021.1.22配信)の活用も一考に値します。

 

最後になりましたが、糠漬けを始めるためには糠床を作る必要があります。

従来の米糠からだと手間も時間も掛かって世話も大変ですが、標題を「手軽に始めて続けられる」としたのは、無印良品が販売した「発酵ぬかどこ」(みたけ食品製造)があるからです。予め発酵させているのでそのまま漬けらますし、毎日のかき混ぜが要りません。チャック付きの袋に入っているので、容器を用意せずに直ぐ始められます。

先ずはキューリや大根などの野菜から漬けてみて、その後ネット情報を参考に、果物やキノコ、さらに卵や肉・魚まで、試行錯誤を楽しんでみてはいかがでしょうか。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

高血圧を改善する食事に「塩出し食」の勧め

高血圧は日本人の約4300万人が患っている国民病で、動脈硬化から脳卒中心筋梗塞などにも繫がる怖い病気でもあります。

 

ところで高血圧を改善するには、食事で「減塩」するのが定番ですが、薄味の味気なさは長続きしません。そこで発想を転換して、入る塩分を減らすのではなく、出すのを増やそうとする「塩出し食」の勧めを紹介します。

 

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塩分(NaCl:塩化ナトリウム)の中で、血圧にはナトリウム(Na)の摂りすぎが良くないのです。

塩出し食とは、ナトリウムの排出に効くミネラル、特にカリウム(K)・マグネシウム(Mg)・カルシウム(Ca)を効率よく摂取して、ナトリウムを追い出すようにする食事を指します。

 

これら3種のミネラを多く含む食品(一食分の多い順)には、次の様なものがあります。

 ・K :ホウレン草、アボカド、カボチャ、バナナ、牛乳

 ・Mg:アーモンド(炒り、無塩)、ライ麦パン、ゴボウ(茹で)、シラス干し(半乾燥)

 ・Ca:干しエビ、牛乳、真アジ(皮付き、焼き)、ヨーグルト(無脂肪、無糖)

カリウムには目標量、マグネシウムとカルシウムには推奨量が設定されているのですが、いずれも摂取不足で満たない現状です。今より1,2割増しでの摂取を心掛けてください。

 

具体的には「DASH食」(高血圧を防ぐ食事法の略)と言われるものがあります。

その内容は、上記3種のミネラルと食物繊維さらにタンパク質をしっかり摂り、飽和脂肪酸コレステロールを抑えるという方法です。

 ・増やす食品:緑黄色野菜、果物、海藻類、牛乳・乳製品、大豆製品、魚、ナッツ類

 ・減らす食品:脂身の多い肉類、魚卵、菓子類

 

但し、腎疾患などでカリウムの摂取制限のある人は注意が必要(医師に相談)ですし、高齢者はフレイル(虚弱)予防のため、赤身の肉や卵などのタンパク源を減らす意識はしないでください。

 

最後に確認ですが、高血圧改善のための塩出し食(DASH食)を勧めましたが、減塩をしなくても良いわけではありません。あくまでも、継続できる範囲の減塩は意識しつつ塩出し食を取り入れて、実効を上げましょうと言うことです。

他には、減酒や減量(食べ過ぎない、適度な運動)にも心掛け、併せて実行してください。

(この情報の一部は、日経Gooday:「血圧は下げたい、でも減塩は...」そんな人にお勧めの「塩出し食」とは(2021.1.12)を参考にしました。また、本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

今こそ見直そう「ビタミンD」の効能の重要性

必須栄養素であるビタミンは13種類ありますが、その中で「ビタミンD」は、骨に関わる働きがあって骨粗鬆症予防になるくらいの認識ではないでしょうか。

 

ところが近年、骨との関わり以外に、免疫力向上やアレルギー症状の改善、抗がん作用、花粉症やうつ病不妊症との関連など、多彩な効能が明らかになってきています。

つい最近では、血中ビタミンD濃度が高いとCOVID-19(新型コロナ)の感染リスクや重症化率が低い、という報告も示されました。

 

そこで、特に冬には不足しがちになるビタミンDの有効性を高める方法について紹介します。

 

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そこで、特に冬には不足しがちになるビタミンDの有効性を高める方法について紹介します。

 

まずビタミンDの種類ですが、主に植物由来のD2と動物由来のD3の2つに大別されますが、両者の体内での生理活性はほぼ同程度とされています。

 

次にビタミンDが多く含まれる食品(一食分)を挙げます。魚介類やキノコ類には多いのですが、肉類は少なく、穀類や野菜・果物類には含まれません。

    ・サケ(一切れ/80g) → 25μg・イワシ(丸干し/30g) → 15μg

    ・ブリ(一切/80g) → 6.4μg・しらす干し(半乾燥品/10g) → 6.1μg

    ・全卵(ゆで/50g) → 0.9μg

    ・きくらげ(乾燥品2g) → 1.7μg・干しシイタケ(6g) → 0.8μg

なお、食品に含まれているのはビタミンDの前駆体(プロビタミンD)で、他に皮膚にも前駆体が存在していて、いずれも肝臓と腎臓を経て活性型のビタミンDに成ります。

 

ビタミンD摂取の目安量は8.5μg/日(18歳以上の男女)ですが、実際の一日摂取量は7μg程(国民健康・栄養調査(2018年))で、摂取不足(特に青年層)が明らかです。また、脂溶性のビタミンなので耐容上限量(100μg/日)が設定されていて、過剰摂取のリスクもあります。

 

ともかく、活性型ビタミンDの血中濃度を高めるためには、上記の食品摂取だけではなく、皮膚に紫外線を浴びる、つまり日光浴する必要があります。有効な紫外線は直射日光や屋外の日陰(服やガラス越しは無効)で、夏場で少なくとも10分程度、冬場には30分は浴びてください。

 

今の時期(冬場、特にコロナ禍)は外出がままならず、日光浴ができ難い状況です。散歩やウオーキング、庭先やベランダに出るなど(肌の露出)を意識して、ビタミンDの多彩な効能の恩恵を受けるように心掛けましょう。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

コロナ感染で味覚障害が現れる今、味覚を再認識しよう!

そもそも味覚としての基本の味は5つあり、甘味・酸味・塩味・苦味・旨(うま)味です。この5味の他に、辛味や渋味などが補助味として知られています。

 

基本の5味は、味蕾という味細胞が感じ取って神経細胞を介して脳で判断しますが、補助味は味蕾を通さずに化学的あるいは物理的刺激に依って得られ、双方が相まって食べ物の美味しさを担っているのです。

 

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ヒトに5味が備わっている理由は2つに分けられます。

一つは必要な栄養を摂取するためであり、もう一つは危険な食べ物を避けるためです。

前者は甘味(エネルギー源の糖質摂取)・塩味(ナトリウムなどミネラル摂取)・旨味(体を作るタンパク質摂取)で、後者が酸味(腐敗した食べ物回避)・苦味(有毒成分を含む食べ物回避)です。

 

また味覚物質が混ざり合って相互作用することで、特別な効果も生まれます。

相乗効果:同じ呈味成分が混ざって相互に味を強め合う(昆布とカツオ節の合わせ出汁)

対比効果:異なる味覚が合わさって一方の味覚が強まる(スイカに少し塩で甘味増)

抑制効果:異なる味覚が合わさって一方の味覚が弱まる(コーヒーに砂糖で苦味減)

 

このように味覚は複雑で奥が深く、正常に作用していてその自覚があれば良いのですが、普段は無意識に過ごしている方が多いのではないでしょうか。

 

コロナ禍により自粛生活が続く中で特に気を付けるべき点は、加工食品やスナック菓子が増えることによる塩分の摂りすぎと、甘い物は別腹(苦を怪に変換?)での甘味依存です。

 

コロナ感染で味覚障害が現れるとのことで、味覚に意識が向くと思われる今、自分の味覚を再認識してみてください。加齢によって感度は低下しますし、栄養の偏り(特に亜鉛不足)でも障害を起こします。

味覚を研ぎ澄ますことで、栄養状態がより正常になり、かつ食事自体も楽しめるようになるのではないでしょうか。

おせち(御節)料理は保存の利く中身、その栄養や健康への影響は?

日本人がお正月食べる「おせち(御節)料理」について、改めて紹介します。

「おせち」の漢字は御節で、もともと元旦や五節句の節目に振る舞われていた料理ですが、その中で最も重要な正月の料理を指すようになりました。

 

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おせち料理はめでたさを重ねるという意味合いで「重箱」に入れます。四段重が正式(最近の市販品は二段や三段が多い)で上から、一の重に祝い肴(ざかな)とカマボコや口取りなどの前菜、二の重に焼き物、三の重に煮しめなど、与(四は死を連想し嫌う)の重には酢の物を詰めます。祝い肴3種の黒豆・数の子・ごまめ(orたたきごぼう)を始め、中身は縁担ぎの意味が込められていることはご存知でしょう。

また、正月の三が日はかまどの神様(引いては煮炊きの家事)に休んで貰うという意味で、三日ほど常温で保存の利く食材や味付けがされています。

 

こんな中身で作り置きの「おせち料理」の栄養や健康に及ぼす影響を検証していきます。

 

まず中身を栄養素別に分類します。

 ・糖質源:里芋、栗きんとん等

 ・タンパク源:エビ、魚の煮物、黒豆、数の子、カマボコ、伊達巻き、田作り等

 ・脂質源:魚、牛や鶏、(あれば揚げ物)

 ・ビタミン源:紅白なます、ゴボウ、酢レンコン等

味付けは日持ちを前提にしていて、塩分や砂糖が多いのが特徴です。例えば伊達巻きは、甘い味付けで糖質源にもなります。

 

次に気になる点を挙げてみます。

「からだにやさしいおせち」の栄養成分表(1食1人前)によると、エネルギーは1000kcal前後、塩分は6,7gと表示されていて、エネルギー(糖分)と塩分過多です。

さらに野菜はなます・ゴボウ・レンコン位なので、不足なのは明らかです。

 

結論として、おせち料理には野菜を一品(サラダや酢の物等)追加するべきでしょう。野菜に多いカリウムが塩分(ナトリウム)を排出する効果も見込めます。

栄養バランスの取れた食事に適度な運動も忘れないで、楽しく健康に正月を過ごしてください。

(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)

代替肉として「大豆ミート」の需要が拡大へ

大豆ミートに関しては、当該ブログでも半年ほど前に「新しいタイプのタンパク食材」として配信しましたが、一般的には未だにブレイクはおろか知名度も上がっているとは思えません。

 

ところがつい最近、「コロナ禍によって飲食業界が打撃を受ける中、焼肉は健闘しており、12月半ばにはある焼肉チェーンが大豆を用いた代替肉の販売を始めた」、という記事がネットに載りました(ITmediaビジネスONLiNE:焼肉業界で「大豆ミート」が主流になる、これだけの理由,窪田順生,2020.12.15)。

 

この記事の中身を、もう少し引用しながら紹介します。

近い将来、世界で食肉の需要量が跳ね上がる中、供給が追いつかなくなる。畜産業のCO2排出量は他の業種の中でも断トツで、食肉がウィルスパンデミックを引き起こしているという指摘もあり、逆風にもなっている。焼肉を現在のように、低価格で満腹できるまで食べらるかは疑問で、代替肉として大豆ミートの普及がリスクヘッジになる。

 

大豆は昔から様々に加工されて、日本の食卓に重要な位置を占めてきたことはご存知のはずです。畑の肉とも呼ばれる究極が「大豆ミートではないでしょうか。

最初は多少の違和感や抵抗があるかもしれませんが、徐々に食卓に取り入れて欲しいという願いを込めて、リブログしますので、当該ブログの「新しいタイプのタンパク食材:大豆ミートとは?」(2020.5.30)、を改めてご覧頂きたく思います。