秋が旬の果物は豊富、美味しさの秘密「甘味」を探る!
実りの秋が旬の果物と言えば、出回り順に桃・イチジク・ブドウ・梨・リンゴ・柿などが挙げられますが、美味しさの秘密の第一は甘味ではないでしょうか。
そこで本報では、秋に旬を迎える果物の「甘味」について主に考察します。
まずは、甘味成分の糖質量とそれを構成する糖の種類と量を比較します(100g当たり)。
糖質(g) 果糖(g) ブドウ糖(g) ショ糖(g)
白桃 8.4 0.7 0.6 6.8
イチジク 11.0 5.2 5.6 0
ブドウ 14.4 7.1 7.3 0
日本梨 8.3 3.9 1.4 3.0
西洋梨 9.2 6.0 2.4 0.7
リンゴ(皮つき) 12.7 6.3 1.4 5.0
甘柿 13.3 4.5 4.8 3.8
糖質の種類は熟すにつれて、デンプンが小さな糖に分解されて甘くなっていきます。果物は果糖が主成分と思うでしょうが、上表のように3種の糖の割合は果物により様々(主要の糖は太字)です。
完熟に近い果物の甘味の強さは糖質量にほぼ比例しているのですが、正確には甘味の程度が異なる果糖(甘味度1.3)、ブドウ糖(同0.6)、ショ糖(同1.0)の割合に依ります。
果物の甘味度=果糖量×1.3+ブドウ糖量×0.6+ショ糖量×1.0
従ってそれぞれの果物の甘味度は、白桃 8.1、イチジク 10.1、ブドウ 18.4、日本梨 8.9、西洋梨 9.9、リンゴ 14.0、甘柿 12.5となり、ブドウの甘味が際立ちます。
では、口に入れた際に感じる味覚としての甘さの度合いは上記の甘味度の順かと言えば、そうではなく、共存する酸味により相殺されるのです。
このことを考慮した食味の指標を「糖酸比」と言い、糖度(%=100g当たりのg数)を酸度(%)で割った値で、高いほど甘く低くなるにつれて酸っぱく感じるというわけです。
例えば、糖度は同じ10%のA,B,Cの3品種があって、酸度がAは0.2%、Bは0.3%、Cは0.5%と異なる場合のそれぞれの糖酸比は次のようになります。
A=10/0.2=50 B=10/0.3=33 C=10/0.5=20
つまり、Aを最も甘く感じ、次がBで、Cはむしろ酸っぱく感じるはずです。
この3品種をリンゴに当てはめると、Aは王林や津軽などの甘味種で、Bはふじやジョナゴールドなどの甘酸適和種、Cは紅玉などの酸味種になります。
なお甘酸適和種(美味しい目安)の糖酸比は果物の種類によって異なっており、ミカンは12,3と低く、バナナでは40程と高いです。
店頭で糖度が表示してある果物を見かけますが、同じ果物でも品種が違えば、多少の糖度差はあまり意味を持たないかもしれませんね(上記リンゴの例)。
いずれにしても果物の美味しさは、甘味が大きなウェイトを占めていますが、他にも瑞々しさやシャキシャキ感、香りなども重要な要素です。特に多くの品種が出回るリンゴや梨などで、品種の違いを実感してみてはいかがでしょうか。
(本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)