寿命を左右するのは「腸内細菌」、その条件や食事との関係は?
腸内細菌やその細菌叢である腸内フローラのことについては、当該ブログでも過去数回に渡って紹介してきました。もしあやふやであったりよく知らないならば、先だって「免疫力向上に繫がる腸内環境を整える(「腸活」)には?」(2020.12.4配信)を読んでください。
本報では、最近明らかになった「腸内細菌と寿命との関係」について言及します(*)。
先ず、現状で長寿と関係する腸内細菌の条件は次の2つです。
- 菌の種類や数に多様性があること
- プロテオバクテリアという種類の菌が少ないこと
腸内細菌の細菌叢(腸内フローラ)の構成は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌(前2者の優勢な方に同調する菌)がほぼ2:1:7の割合が理想的で、多様性の低下と健康の悪化には相関が見られるとのこと。
プロテオバクテリアには、大腸菌やサルモネラ菌、ヘリコバクターピロリ菌など病原性や炎症を引き起こす細菌が含まれる。これらの菌類が多いと死亡率が上がるとのことなので、少ない方が良い。
さて、長寿に関わる腸内細菌を作る食事とは?
欧米の研究(日本ではまだ少ない)でエビデンスが最も多いのは「地中海食」です。
(*)
イタリアやギリシャ・スペイン・モロッコなど、地中海沿岸地域で一般的に食べられている食事。野菜や果物、豆、穀類をバランスよく食べ、オリーブオイルをよく使ってワインを飲み、魚介類をメインに肉の摂取頻度が少ない食べ方をいう(上図参照)。
これまでに肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防・改善や、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の予防に有用ということが明らかになっている。
これらの健康効果が腸内細菌叢を介してもたらされるという動物試験の報告もあり、サルを一定期間飼育した後に腸内細菌の違いを比較すると、地中海食群では西洋食(アメリカ中心の食)群に比べて明らかに菌の多様性が高かったという。
京丹後地域は、100歳を超える「百寿者」の割合が全国平均の3倍を超える長寿地域。ここの高齢者は野菜や果物、豆やイモ、全粒穀類や海藻を食べる頻度が明らかに多く、肉より魚をよく食べるという伝統的な日本食であり、地中海食との類似点が多い。
さらに腸内細菌を分析すると、酪酸産生菌が多くてプロテオバクテリアが少なかったとのこと。酪酸菌が作る酪酸は、腸のバリア機能の維持や正常な蠕動運動を促すのに役立つことが知られている。
他にも日本人の健康には、麹菌が持つ成分を餌に増殖する菌やビヒィズス菌が多いことも長寿と関係していて、麹菌で発酵させる麹発酵食品(味噌や醤油、甘酒など)は日本特有のものである。
日本人の腸では日本人の食生活に合う菌が、寿命短縮に関わる有害菌の増えにくい環境作りなどで長寿を支えているのではないか、と考えられる。
((*)日経Gooday:細菌と私たちのふか~い関係(内藤裕二京都府立医科大教授,2022.5.10 & 5.13)を参照し引用・改編しました。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)