Dr.トムの 「食と健康」 情報ブログ

健康の視点を通して、「食」に関するタイムリーな情報を、専門家の立場から提供します。一記事は1000字程度にまとめ、ほぼ週一のペースで配信する予定です。 読者にとって、ヘルスリテラシーを養う一助になれば幸いです。

甘酒ブームに続く「酒粕」、その知られざる魅力とは?

「甘酒」に関しては当該ブログで配信済み(2019.10.3~)で、その中に酒粕甘酒のことも少し紹介しましたが、麹甘酒推しでした。

 

本報では改めて、「酒粕」には甘酒の原料になる以外にも多くの魅力があることの情報提供をします。

 

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そもそも酒粕とは日本酒の残りカスです。つまり米に米麹と酒母(酵母)を混ぜて発酵させた醪(もろみ)を搾って濾すと、原酒とともに酒粕が採れるわけです。

粕(カス)と名付けられていますが、いわゆる副産物で、日本酒の製造工程でできる様々な栄養成分が含まれているのです。このことは、昔から甘酒以外にも粕漬けや粕汁など多くの料理に使用されてきたことが、物語っています。

 

まず、酒粕の主な栄養成分(100g当たり)を確認しておきましょう。

 

エネルギー

タンパク質

脂質

糖質*

食物繊維

 亜鉛

  銅

V.B2

V.B6

葉酸

アルコール

  (kcal)

      (g)

  (g)

  (g)

        (g)

 (mg)

(mg)

(mg)

(mg)

(μg)

   (g)

 215

  14.9

 1.5

 18.6

     5.2

  2.3

0.39

0.26

0.94

170

  8.2

                                         (*)炭水化物-食物繊維の値

 

酒の残渣なのでアルコール(7kcal/g)が8%程残存していることは頭に入れて置かねばなりません。

エネルギーやタンパク質は肉・魚類並みにあり、食物繊維をはじめ表示のミネラルやビタミン類も多く含まれ、食事摂取基準の1日の必要量や目標量の2割を超えています(太字)。特にビタミンB6や葉酸はほぼ8割に達しています。

また、タンパク質や糖質の中には難消化性のタイプの成分(レジスタントプロテインレジスタントスターチ)が含まれていて、次に示す効能にも幾つか関係しています。

 ・腸内環境改善や便秘解消

 ・糖尿病、心臓病、高血圧、がん等の生活習慣病予防

 ・肥満予防やコレステロール値の低下

 ・肌の美白や保湿

 ・血流促進や冷え性改善

 

酒粕には平たく四角い板状をした板粕が多いですが、板状にならなかったバラ粕、さらに板粕やバラ粕を柔らかく練り上げた練り粕(さらに熟成させた踏込粕)があり、市販されています(下図)ので、用途により選択してください。

 

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最後に、酒粕の食への活用法の紹介です。

 ・そのまま焼く、ペースト状のものをパンに塗りトーストする

 ・酒粕甘酒:水200mLに酒粕30~50gを混ぜ、砂糖などで味を調整する

 ・粕漬け:最も単純な粕床(*)は酒粕100gに対して酒か味醂50mLを混合する

 ・粕汁:様々な具材があり、レシピを参照する

 ・煮込み料理や鍋、またスイーツに加える

 

日本酒の副産物である酒粕ですが決してカスではなく、栄養豊富で多彩な健康効果だけでなく美容効果も認められる優れものです。なおかつ100g100円前後とお手頃価格なのも有り難いと思います。

アルコールが残存していることに気をつけ、かつ一度の大量摂取(100g以上)も避けるべきですが、是非、食生活で積極的に取り入れてください。

((*)ためしてガッテン:酒かすパワー大全開!(NHK,2015.11.25)。また本文中の下線部の詳細については、インターネット等の情報で確認してください。)